八王子市立高尾山学園での活動

町田武生会員が5月22日の午後、八王子市立高尾山学園で、「生命は細胞にある」というタイトルで実験授業を行いました。参加した生徒は2名、教員は、中学理科教員と校長で計5名でした。

細胞の概容を説明した後、まずは細胞を顕微鏡で観察することから始めました。用意したゾウリムシおよびミドリムシを観察してスケッチしてもらいました。顕微鏡下で活発に動き回るゾウリムシとミドリムシを観察するのは興味深いようでした。
神戸大学洲崎ラボのページより宮城教育大学見上ラボのページより

次に、カナダモの葉片を使って、細胞が整然と整列している様子と葉緑体の存在を見てもらいました。さらに葉緑体が細胞内を移動する原形質流動を観察してもらいました。

今度は、ヒトのからだのつくりを考えることにしました。1個の受精卵から始まって、お母さんのおなかの中で発生が進み、最終的に細胞総数がおよそ37兆個のヒトのからだになります。そのうちおよそ26兆個は赤血球です。神経細胞は5千億個できますが、そのうち8割は死滅して、残るのは1千億個程度であることなどを説明しました。

細胞は集まって組織を作り、組織は器官を構成します。そこで、マウスの解剖図を配布して、体を構成する器官・臓器の説明を行いました。
池田博明氏のページより

用意した組織プレパラートで、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、甲状腺、大脳などの組織を顕微鏡で観察してもらいました。

これらを見ながら、体を構成する細胞には、生涯にわたって細胞分裂を続けるものがある一方、生後は細胞分裂をせずに、そのまま存続するものがあることも説明しました。

生徒は進んで観察し、楽しんでいるように見えました。4名の理科教員にいろいろと協力していただき、たいへん助かりました。

ところで、終了時刻に合わせて、理科室から火災が発生したとして、全校避難訓練が行われました。全員で火元の理科室から、ドタバタと校庭に避難する羽目に。校庭に集まった全校生徒は、小中合わせてせいぜい50<名程度で、教員などスタッフの姿ばかりが目に付く避難訓練ではありました。ちょっと余計ですが、印象的だったのでつい一言。

総会後の講演会

5月19日の総会終了後、午後3時から午後4時10分まで、和田勝会員による「ウグイスってなにもの? -その繁殖戦略とホルモンー」というタイトルの講演会が行われました。

総会後に公開の講演会を行うのは、今回が3回目です。そのため、ちょっと気張ってA4の色刷りチラシを外注で作成し、総会の案内に同封して会員に配布するとともに、いくつかの場所に配布しました。
でもって盛況だったかというと、そんなことはなくて、会員以外の聴衆は両手で数えられる数でした(残念!)。

講演の内容は予告に書いたように、名前はよく知っているけれど姿を見た人はあまりいないウグイスの繁殖戦略について、和田会員が協力をしてくれた学生さんとともに秩父の山の中で行った研究をもとにしたもので、このサイトの2018年2月のホテルニューアカオでの活動報告に載せているものを少し短くして話しました。内容に関してはそちらをご覧ください。

ウグイスのような野生の鳥を対象に、フィールドで生理学的な研究(内分泌学も含めて)を行うのは、ますます難しくなっているように思います。「役に立つ研究」を行うことが、大学のような研究機関にも強く求められ、研究資金も「役に立つ研究」に選択と集中という名のもとに注ぎ込まれ、ウグイスの繁殖戦略を明らかにするというような「役に立たない研究」には、回ってきにくくなっているように思えます。

本来、科学の研究というものは、研究者が観察を通じて持った不思議だな、なぜだろう、なぜを説明したいな、という素朴な情念を実現させるために行う営為が根本にあります。こう書くと、そんなものにお金を出せるか!と言われそうですが、多くの科学的成果は、このような基礎研究から生まれた種を引き継いだ応用研究から生まれました(研究にはもう一つ開発研究があります)。広い裾野の基礎研究があり、その上に応用研究、さらには開発研究が乗っかる形になることが望ましいのではないでしょうか。

これは講演会が終わった後、懇親会の会場に向かう道すがら話し合ったことを発展させて書いたものです。SSISSは、上に述べた情念を小学生、中学生、高校生が育てていくのを手助けしたいと思っています。

平成30年度の総会終了しました

5月19日(土)午後2時から2時45分まで、池袋立教中学校・高等学校地学教室で平成30年度の定例総会が開催され、無事終了しましたので、経過の報告をします。

野津憲治庶務担当理事の開会の宣言の後、出席者と委任状等提出者数から総会は成立しているという宣言があり、大井みさほ理事長から挨拶がありました。

続いて議長の選出が行われ、大井みさほ理事長が議長を務めることになり、以降は議長が議事進行をつかさどり、議事が進められました。

第1号議題(平成29年度事業報告及び収支決算報告)
議長の指名により、野津庶務担当理事から資料に基づいて平成29年度事業の報告がなされました。続いて和田会計担当理事より平成29年度活動計算書、貸借対照表、財産目録に則って収支決算の報告がありました。

この後、奥田監事より4月12日に東京大学理学部化学館会議室で行われた監査の報告がなされ、適切に管理されていることが報告されました。その後、審議の後、採決されて可決承認されました。

第2号議題(平成30年度事業計画及び収支予算案)
野津庶務担当理事から平成30年度の事業計画の説明があり、和田会計担当理事からは予算案について、前年度と比較しながら説明がなされました。相変わらず会員の高齢化と会員数の減少が続いているが、事業費(実際の活動)にかける金額を増やして、積極的に行こうとする予算案になっていることが説明されました。採決の結果、可決承認されました。

第3号議題(定款変更の件)
平成28年6月1日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し、同年6月7日に公布されました。この改正で、NPO法人は貸借対照表を公告することが義務付けられました。公告の方法は、1)官報に掲載、2)日刊新聞紙に掲載、3)電子公告、4)公衆の見やすいところに掲示、があります。

本法人はすでに、貸借対照表を含む事業報告を、このサイトに載せているので、理事会は3)を採用し、その旨を定款第54条に付記する案が提案され、採決の結果、可決承認されました。

予定されているすべての議案の審議が終了したので、自由な意見交換が行われました。5月12日に開催された「教科『理科』関連学会協議会シンポジウム」に出席した細矢会員から、新学習指導要領では「数理探求」がキーワードになるという発言があり、町田会員も意見を述べました。

最後に、議事録署名人の選出が諮られ、箕浦真生会員と有山正孝会員が選出されました。庶務理事が閉会を宣言して総会は無事、終了しました。

総会の議事録はここにあります。

総会終了後、午後3時から和田勝会員の講演会があり、さらにその後、懇親会が開かれました。

東京雑学大学での活動

和田勝会員が5月17日の午後2時から4時まで、西東京市民会館で行われた東京雑学大学1133回講義に出講し、「歴史にまつわる遺伝の話 -DNA、遺伝子をからめてー」というタイトルで講義を行いました。

東京雑学大学の聴講生は文系の方が多いようなので、その方たちの気を引くために、一番最初のスライドで夏樹静子著の「裁判百年史ものがたり」の本の表紙(単行本刊行当時のもの)を示しました。
2010年の刊行時に購入して読みましたが、推理小説作家の夏樹さんの筆によって12のエポックメイキングな裁判の記録が書かれていて、大変面白い本でした。その第1話に取り上げられているのが「大津事件」です。

「大津事件」は、後のロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世が、1891年(明治24年)に、まだ皇太子の時に日本を訪問した折、滋賀県大津市で警察官津田三蔵にサーベルで頭部を切りつけられるという事件です。高校の日本史では、司法権の独立を守った裁判ということで、習った記憶がある方もいると思います。

どうして「大津事件」を引き合いに出したかと言えば、このときの血染めのハンカチが、後にDNA鑑定に使われることになるからです(血液量の関係で、うまくいきませんでしたが)。

ニコライ2世一家7人は、1917年のロシア革命の後に拘束され、エカテリンブルグで1918年7月に惨殺され、遺体は棄損されて埋められます。
Wikipediaより

ソビエト連邦の崩壊後、遺体が発見され、1991年に皇帝・皇后を含む5人であることがDNA鑑定により確認されます。2007年に残りの2人(皇太子アレクセイとマリア皇女)が別の場所で発見され、こちらも間違いないことが確認されます。ここで講義では、親子鑑定を例にしてDNA鑑定について概略を話しました(ここでは省略)。

ロシア革命が起こり、革命が成功して一家が拘束され、その後に惨殺されたという悲劇は、なぜ起こったのでしょうか。もちろんいろいろな要因が絡み合っていますが、その一つに生物学的にみて、興味深い要因があります。

皇女が四人続き、五番目にやっと生まれた皇位継承者である男の子アレクセイが、血友病だったのです。これを気にした皇帝一家が宗教に走り、宮廷内で祈祷師ラスプーチンの暗躍を許し、ロシア革命の遠因になったといわれています。

血友病は、血液凝固が起こりにくくなる遺伝病で、X染色体長腕上の先端近くにある遺伝子が関係しており、伴性遺伝の例としてよく知られています。ニコライ2世の妃であるアレキサンドラが血友病の保因者だったのです。アレキサンドラ皇后は大英帝国のヴィクトリア女王の孫で、ヴィクトリア女王も保因者だったので、その遺伝子を受けついてしまったのです。

写真は、立っているのがニコライ2世、前列右がヴィクトリア女王、左がアレクサンドラ皇后で長女オリガを抱いています。

ヴィクトリア女王とその子、孫などの一族の家系図を示します。

系図は、第75回日本血液学会学術集会(2013年)斎藤英彦「血友病物語」のページのものを改変

系図を拝借した元のページには、血友病やヴィクトリア女王などのことが詳しく書かれていますので、リンクをクリックしてご覧ください。でもって、これを読んでわかったことがあります。講義では、ヴィクトリア女王の血友病は第8因子タンパク質をコードしている遺伝子の欠陥による血友病(A)として説明したのですが、2009年に、これとは別な第9因子をコードする遺伝子(お互いに隣接)の欠陥による血友病(B)であることが明らかにされたそうです(Rogaev EI, Grigorenko AP, Faskhutdinova G, Kittler EL, Moliaka YK. Genotype analysis identifies the case of the “royal disease”. Science. 2009; 326: 817.)。間違えました、すみませんでした。

血液凝固のカスケードの大まかな図を載せておきます。
かなり複雑な反応ですが、第8因子あるいは第9因子が欠陥だと、反応が進まなくなり血液凝固が起こりにくくなります。これが血友病という遺伝病です。上で述べたように、X染色体の長腕の末端近くにあるので、伴性遺伝をします(詳しくは後で説明します)。

http://blog.san-x.co.jp/toretate/2012/11/post_620.htmlより

長い枕でしたが、ここから、遺伝とはどういう現象か、遺伝子とは?DNAとは?というお話になります。最初に登場してもらうのは、もちろんメンデルです。メンデルはエンドウを使い、遺伝の法則というか、遺伝を説明するスキームを明らかにしました。

子どもが親に似るということはよく知られていましたが、なぜ?を説明することは長い間できませんでした。当時は、たとえば紫と白の花の色のような形質は、交配すると混ざってしまうと思われていました。メンデルは観察を通して、混ざってしまうのではないと確信して、実験を計画します。十分に時間をかけて純系(たとえば花の色に関して、自家受粉をすると紫の花あるいは白い花の一方しかつかない系統)を得て実験を開始します。

純系の紫色の系統と白い花の系統を掛け合わせると、雑種第一代はすべて紫の花になりました。
こうして得られた雑種第一代どうしを自家受粉しました。その結果は、紫の花と白い花は705:224で、整数にすると、3:1でした。

メンデルは、花の色以外の6つの形質でも同様な結果であることを実験で示します。実験で得られたこれらの結果を説明するために、メンデルは次のように考えました。

1)一つの形質に対応する独立した「要素」という概念を導入
2)「要素」は、一つの形質に対してペアで存在し、生殖細胞(植物の場合は胚珠内の卵と花粉管の精細胞)が作られるとき、二つに分かれて分配される
3)「要素」には、優性(顕性)と劣性(僭性)の性質があり、ペアの一方が優性だと劣性の表現型は覆い隠される

こう考えると、次のパネットの方形で表されるように、うまく説明することができます(もちろん、メンデルは論文の中で、このような方法では説明していません。文字と数式を使っていますが)。花の色という形質に対して、優性のFと劣性のfを考えます。純系の紫の花はFFで、白い花はffと表すことができます。
これを掛け合わせると、すべてFfになり、優性の紫色の花をつけます。

こうして得られた雑種第一代Ffを自家受粉すると、次のようになります。

その結果は、FF:Ff:ff=1:2:1となり、Ffは上と同じように優性の形質が現れるので、紫の花:白い花=3:1になることが説明できます。

実験結果を整数にして要素という単位(粒子)概念を導入したりして、今考えてみても非常にすっきりとしています。これはメンデルがウィーン大学に内地留学して、当時の物理的な考え方に触れていたためだろうと言われています。でも、1865年の論文の発表当時は、メンデルのこの考えは全く理解されませんでした。

彼の死後、1900年になってメンデルの法則は再発見されます(正しくは論文として掲載されます)。つまり、ド・フリース、コレンス、チェルマックが実験で明らかにしたことが、すでにメンデルによって論文として発表されていたことを見つけるのです。

再発見されたときは、すでに顕微鏡が発達し、核の中に染色体(下の図を参照)という構造があり、ペアで存在する相同染色体が生殖細胞を作るときに減数分裂によって、それぞれの生殖細胞に分配されるということが観察されていました。こうして、メンデルが「要素」と考えた概念的な粒子は、染色体上に配列する実体だととらえられるようになり、遺伝子(gene)と名付けられます。

ここで伴性遺伝について説明しておきます。ヒトは46本の染色体を持ち、22対44本は常染色体で、同じ大きさの染色体がペアであります。性を決める性染色体には、XとYがあり、XXだと女性、XYだと男性になります。XとYは大きさが異なり、YにはXの長腕に対応する部分がありません(ちなみに下の図では、ペアになった染色体の一方も真ん中で結合した二本に見えますが、これは細胞分裂の中期の染色体だからです。普段は一本です)。
カナダMemorial Universityのページより 著作権Steven M. Carr

そのため、Xの長腕の端にある血友病の遺伝子の場合、男性のYでは対応する相手がなく、劣性だとその性質が現れてしまいます。次の図は、保因者のアレクサンドラと正常なニコライ2世が子をなした時に、現れるであろう血友病の遺伝をパネットの方形で示したものです。
確率として、女性では正常と保因者が1:1、男性では正常と血友病患者が1:1になります。アレクセイは左下ではなく右下になってしまったんですね。

メンデルの選んだ7つの形質のうち4つが、現在のところ、どのような遺伝子によるかが明らかになっています。そのうちの豆が丸いか(R)、しわがよるか(r)の対立形質について触れておきます。デンプンは直鎖のアミロースと枝分かれのあるアミロペクチンの混合物です。アミロペクチンは、アミロースから枝分かれ酵素によってグルコースが付加されてつくられます。Rはこの枝分かれ酵素の遺伝子だったのです。Rが欠陥品だと、アミロペクチンができず、原料のグルコースが余ってしまいます。すると浸透圧の関係で豆の中に水が蓄えられ、実がなった後の乾燥の過程で、この水が失われてしわがよるのです。

このように、目に見える形質は、酵素タンパク質によって現れ、そのタンパク質を作る設計図が遺伝子なのです。ヒトでは、上の写真にある22対+2本の性染色体の上に、とびとびに遺伝子が並んでいることが、モーガンのショウジョウバエの実験で明らかにされます。血友病の場合は、第8因子と第9因子と呼ぶ酵素タンパク質の設計図がX染色体上の長腕の端の方にあるのです。

それでは遺伝子の本体は何なのでしょうか。いくつかの実験で(詳しいことは省略)、DNAであることが示されました。DNAはデオキシリボースとリン酸のつながった共通骨格と、A、C、G、Tの4つの塩基から構成されています。このDNAの構造がワトソンとクリックによって明らかにされたのが、1953年でした。二本の共通骨格が、梯子の縦木となり、そこから足を掛ける横木が一定間隔で固定され、ひねりを加えた二重らせん構造をしています。横木は、上記の塩基がA:T、C:Gの組み合わせになっています。

4種類しかない塩基が、どうして20種類のアミノ酸をコードできるのか最初は謎でしたが、4つのうちの3つの塩基の組み合わせが64種類あるので、これでカバーできるというガモフの示唆で実験が始められ、実際にその通りであることが示されます。こうしてすぐに、64通りの組み合わせがどのアミノ酸をコードしているのかが明らかにされます。下の表内にあるアルファベット3文字がアミノ酸の略称です。タンパク質は、ここにある20種類のアミノ酸が並んでつながった分子で、アミノ酸の性質によって、酵素だとか抗体だとか、受容体だとかのさまざまな機能を発揮できるのです。DNAは、アミノ酸の並び方をACGTの文字で書いた設計図なのです。

最初に述べた血友病や豆の形で、欠陥品の酵素がつくられたのは、設計図である塩基の文字が変わってしまったため(あるいは抜けてしまったため)に起こります。このようなDNAの塩基の変化を突然変異と言っています(これ以外に染色体突然変異もあるが省略)。たとえば、上の表でTTTはPhe(フェニルアラニン)をコードしていますが、もしも3文字目のTがAに変わってTTA になると、コードしているアミノ酸はLeu(ロイシン)になってしまいます。これが突然変異にです。

3文字目のTがCに変わっても同じPheをコードしているので、すべての突然変異がアミノ酸の変更を起こすわけではありません。表内に3つStopとありますが、これは区切り、すなわちピリオドを意味するコードで、これ以降の塩基の並び方は意味を失います(ミスセンス突然変異)。文章の途中に突然、ピリオドが現れて本来のものより、短い文章になってしまうことに該当します。

ここまでお話した血友病や豆の形の例は、1遺伝子→1タンパク質→表現型(形質)という単純なものでした。形質の中には、複数の遺伝子が関係するものがたくさんあります。背の高さや顔の表情などがその例です。

その例として、「ハプスブルグ家の下顎」について簡単に触れておきます。下の絵はベラスケスが描いたフェリペ4世の肖像画です。下唇と下顎が前に出ているのが見て取れます。

オーストリアとスペインのハプスブルグ家の家系図を見ると、このような特徴的な風貌を持った王様がたくさんいることがわかります。遺伝病なのです。スペインハプスブルグ家の最後の王様であるカルロス2世は、ひどい下顎突出症で、おまけに知的障害があり不能で、早く亡くなります。その結果、スペイン継承戦争がヨーロッパ全体を巻き込んで起こります(1701-1714)。

現在までのところ、骨格性下顎前突症に関与する遺伝子は、完全に解明されてはいませんが、いくつかの候補が挙がっています(BMP3, ANXA2, FLNB, HOXA2, , ARHGAP21のミスセンス突然変異)J. Dent. Res. 94, 569-576 (2015)。このうちBMPが興味を惹かれます。BMPは発生の過程で遺伝子の発現を調節するように働くタンパク質をコードしています。

何故興味深いかというと、ダーウィンフィンチの嘴の形に、このBMPの発現量の違いが関係しているからです。硬い実の殻を割ることができるように、嘴の高さが高くなった種では、BMPの発現量が多いのです。ヒトの場合も、下顎の発生の過程でBMPの発現量が多いと、顎が突出することは大いにありうることです。ただBMPだけでなく、さらにいくつかの遺伝子が関係しているのでしょう。

最後に、がんのついてちょっと触れました。

がん発症のメカニズムとして、よくアクセルとブレーキの話が出てきます。アクセルが踏み込まれた状態になり、ブレーキが利かなくなると、がんになるというものです。アクセルもブレーキも、実はタンパク質です。したがって突然変異が起こる可能性があります。

これらのタンパク質(ドライバー遺伝子)をコードしている遺伝子は、およそ200種類あると考えられています。突然変異は、一定の頻度で生じると考えられています。もちろん修復機構が備わっていますが、それをすり抜けてしまう突然変異もあり得ます。ドライバー遺伝子に起こる突然変異が2から6個貯まると、がんが発症するそうです。

突然変異の要因となる変異原に、なるべく晒されないようにするのがベターです。喫煙が一番の引き金です。

これでおしまい。

上の記述では、体細胞分裂、減数分裂、遺伝子の本体解明、DNAの構造など、かなり省略しました。詳しい説明は下記の本をご覧ください。

「生物学の基礎ー生き物の不思議を探る」和田勝著、東京化学同人、2012.
「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第3版」和田勝著、羊土社、2015

和田勝会員による講演会

来る5月19日には総会が開かれますが、総会の後に下記の要領で講演会が開かれます。

日時:平成30年5月19日(土)午後3時から4時
場所:池袋立教中学校・高等学校 4階地学実験室
講師:和田勝(東京医科歯科大学名誉教授)
タイトル:うぐいすってなにもの?
-その繁殖戦略とホルモンー

20180501PosterA44.pdf

詩歌にもよく取り上げられるので、ウグイスは誰でも知っている鳥の一つだろうと思います。春先に、人里の近くで真っ先に鳴き始めるからかもしれません。すぐ思い出す唱歌は「早春賦」ではないでしょうか。この歌の歌詞では、「時にあらずと声を上げず」となっていて、2月のころのことだろうと想像されます。ウグイスの初鳴きは、関東ではだいたい3月の中旬になります。

そんな名前と鳴き声はよく知られたウグイスですが、ちゃんと姿を見た人は意外と少ないと思います。夏に高原などに行き鳴き声を聞いても、姿を見ることはほとんどありません。初夏を過ぎて夏になっても鳴いている鳥はそれほど多くはありません。そういう意味ではウグイスはちょっと変わりものです。

なぜそうなのか、という問いに答えるべく、秩父の山の中でウグイスを追いかけた演者の研究の結果をもとに、ウグイスの生態とその裏付けとなるホルモンの話をしていただけると聞いています。お楽しみに。

総会のお知らせ

平成30年度が始まっています、と書いたのが4月27日ですから、あっという間に5月になってしまうのは当然ですね。5月に開催される定例の総会のお知らせです。総会では、昨年度の決算及び今年度の活動方針と予算、ならびに定款の改正を諮る必要があります。

定款の改正というのは、平成28年6月1日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し、平成28年6月7日に公布されました。この改正で、NPO法人は貸借対照表を公告することが義務付けられました。公告の方法は、1)官報に掲載、2)日刊新聞紙に掲載、3)電子公告、4)公衆の見やすいところに掲示、があります。

本法人はすでに、貸借対照表を含む事業報告を、このサイトに載せているので、理事会は3)を採用し、その旨を定款第54条に付記する案を提案いたします。

ということで、下記の第14回通常総会へご参加くださるようお願いいたします。

日時:2018年5月19日(土)午後2時から3時
場所:立教池袋中学校・高等学校 地学実験室(4階)
(東京都豊島区西池袋5-16-5)
詳しい通常総会招集の通知及び資料は連休明けに郵送いたします。出席される場合は、同封の議案書の出欠欄に出席のしるしを付して捺印し、同封の返信用封筒(切手貼付済み)でご返送ください。

万一、ご欠席の場合は、議案書により、委任をするか、それぞれの議案に対して議決権を行使するか、それぞれの欄にしるしを付して捺印し、同封の返信用封筒(切手貼付済み)でご返送ください。総会はSSISSの意思決定会議であり、定款により定足数がありますので、お忘れにならないようにお願いいたします。

総会の後に、和田勝会員による講演会が行われます。タイトルは「ウグイスってなにもの? -その繁殖戦略とホルモン-」というタイトルです。どんなお話が聞けるか楽しみですね。

さらにこの後には、懇親会を開催します。といっても大げさなものではなく、近くの飲み屋さんで、楽しくワイワイと懇親を深める予定になっています。

というわけで総会にはぜひご参加ください。

また総会案内の封筒内には、今年度の「会費納入のお願い」の文書と振替用紙が同封されています。文書中の手順に従って会費の納入をお願いいたします。