有山正孝会員が、8月4日の午後2時から3時半まで、江戸川区子ども未来館で夏休み応援プロジェクトのプログラムの一つ「重さをはかる、さおばかり作り」という実験授業を、4~5年生の児童14人に行いました。
最初にさおばかりで重さを測ることを実演します。このような、さおばかりを各自が作るのが今日の最終目的です。さおばかりは、昔はどこの家にもあったのですが、今となっては目にすることはなくなってしまいましたね。このように持って、左側のお皿に測りたいものを載せ、分銅を動かして、釣り合う場所を探して目盛りを読みます。
江戸時代にはこんな携帯用のさおばかりもあったんです。
竿が細いので写真ではわかりずらいですが、象牙のようです。こんな携帯ケースに入れて持ち歩いていたんですね。
重さを測るはかりには他にどんなものがあるでしょう。
天秤ばかりでは大きなものお皿に載せることはできません。昔の学校の保健室にあった体重計は台秤といって、載せ台が大きくなっていて、人がこの台の上に載って体重を測ります。大きなものは象でも測れます。複数のてこを利用して、台の下方への動きを目盛り竿の傾きに変えて測定するのです。
これ(次の写真)は、ばねばかりです。ばねの伸び縮みを利用して測ります。
上皿ばねはかりも、ばねの伸縮を利用した秤です。皆さんのおうちにあるキッチンスケールや体重計も、多くはこの上皿ばね秤です。
天秤棒というのをご存知ですか。下の浮世絵は鈴木晴信の筆になるもので、江戸時代の水売りが天秤棒を使って売り物を運んでいるようすを描いたものです(東京国立博物館所蔵、Wikipediaより)。
丸い天秤棒がないので、角材を利用するとこんな風になります。
こんな小さなざるでは、商売繁盛とはいきませんね。前と後ろのざる(上の絵では桶)に入れる物の重さを同じにすると、棒の真ん中で担げばバランスが取れます。洗濯物干しハンガーを使うとき、水平になるように干すもの(写真では軍手)を両側で同じ数にしてバランスをとりますね。
担いでいる点(ハンガーではつる下げるフックの位置)を支点といい、両側のざる(絵では桶)の下がっている位置を力点といいます。二つの力点のちょうど真ん中に支点があって、両方の力点にかかる重さが同じであれば、天秤棒もハンガーも、傾かずにバランスよくものを吊るせるのです。
この原理を利用したものに精密天秤があります。片方の皿に測りたいものを載せ、反対の皿に分銅を載せて釣り合うようにし、重さを求めます。昔はこれで薬品など僅かな量のものの重さを精確に測る訓練を受けたものです。空気の流れによるかく乱を防ぐために木製のケースに入っていて、測定のたびに前扉を閉じます。
http://monotest.blog119.fc2.com/blog-entry-52.html?spより
ここまでで次のことがわかります。「支点から力点までの距離が等しいときは、力点にかかる重さを同じにすれば釣り合う」ということです。
今度は私が作った装置を使って、まず上の関係が成り立つか確かめてみましょう。左側の距離と右側の距離が同じ3で、どちらもおもりが2の場合は、3X2=3X2 で棒は傾いていません(上にあるクリップは両側の重さを調節するためのものです)。
今度は、右側の同じところにおもりを一つ加えると、3X2≠3X3となって、棒は右に傾きます。
支点から二つの力点までの長さが違う場合にはどうなるか調べてみましょう。
4X1=1X4 で釣り合っています。
3X2=2X3 で釣り合っています。
これらをまとめて言うと、
左側:支点から力点までの距離 X 力点にかかる重さ=
右側:支点から力点までの距離 X 力点にかかる重さ
が成り立つとき、てこは釣り合う、のです。
これを「てこの規則性」といいます。
この「てこの規則性」を利用して、少し別のことをしてみましょう。用意した釘を打ち込んだ木片を配ります。手で抜いてみてください。うーんと頑張っても抜けません。そこでくぎ抜き(バール)の登場です。木片を押さえてくぎ抜きの長いほうをもって下向きに力をかければ、簡単に釘が抜けました。
この場合、くぎ抜きの曲がった部分が支点、力をかける点を力点、その力を伝えるくぎを挟む部分を作用点と呼んでいます。
まっすぐに直すと、下の図のようになります。
支点から力点までの距離を大きくすれば、力点にかけれる力は小さくても作用点には大きな力が伝わります。栓抜きも鋏もペンチも、みんなこれを応用しているのですね。
下の動画も参考になります。
これで準備ができました。それぞれの児童にさおばかり作製キット(さお、紙皿、持ち手用の黄色いひも、皿を下げるタコ糸、クリップ、クリップをつるすタコ糸、分銅の役割をする100g砂袋)を配り、作製開始です。
さおには紙皿を下げるための丸形洋釘(真鍮ヒートンというらしい)と、支点の位置を示す釘が打ってあります。
長いほうのタコ糸を使って、紙皿の3つの穴をくぐらせて洋釘の丸い部分につないで3本の糸が均等の長さになるようにします。次に支点としての持ち手を黄色いひもで作り、さらに砂袋を分銅として使えるようにします。
紙皿に砂袋を3つ乗せ、分銅(砂袋1つ)動かして釣り合う位置を確定し、印をつけて300と記入します。さらに砂袋を増やして400、500とし、あとは等間隔で目盛りを振っていきます。これで300gから800gくらいまで図れるさおばかりができました。砂袋の数が足りないので机ごとに協力して、作業進めてもらいました。
てこの規則性は6年で学習します。今日の実験授業がきっと理解の助けになるでしょう。面白かった、楽しかったという感想が多かったので。
それではこれで終わります。ありがとうございました。