狛江市立第四中学校での活動

岡崎廉治会員が10月19日午前に、狛江市立第四中学校で「元素の話 ー宇宙から生命までー」と題して、3年の3クラス94名を対象に授業を行いました。第四中学校校長先生、副校長先生、理科担当教員、東京都教育庁理科支援担当員なども聴講しました。

3年生のこの時期なので、すでに教科書のいくつかの単元で、宇宙や進化、物質、元素などについては学んでいます。そこでこの授業では、これまで学んだ事柄を、元素をキーワードとして結び付け、総合的に理解させることを目指した授業を行いました。

20161019-1最初に生徒たちの興味を引き付けるためにクイズを3つ。1番目は「ヒトの体にある原子の数は何個ぐらい?」。3択で、1)10億、2)10億の10億倍、3)10億の10億倍の10億倍。
20161019-2それぞれの答えに手を挙げてもらいました。どれが正解だか分かりますか。答えは3)です。めちゃくちゃ、多いですね。

それでは第2問「ヒトの体にある元素の種類はどのくらい?」。1)10種類、2)30種類、3)50種類。
20161019-3答えは2)です。およそ35種類です。少ないですね。ただし分析技術の向上によって増えるかもしれません。ここで原子と元素という言葉の使い方を説明します。原子は粒として認識しているとき、元素は種類としてお互いに区別するとき、です。

第3問は「その元素(原子)はどこでできたか?」。これはほとんどの生徒が地球、太陽、宇宙のうち、宇宙と答えていました。

ここから、元素の誕生から現在までの壮大な時間のお話が始まります。
20161019-420161019-5現在、宇宙は膨張を続けていると考えられています。だとすると1億年前は今よりももっと小さかった、さらにさかのぼるともっと小さかった、、と小さくなって、最初は原子よりも小さなものだったはずです。それがあるとき爆発的に膨張します。ビッグバンですね。今から138億年前のことです。

この過程で、水素原子、ヘリウム原子と少量のリチウム原子が生まれました。
20161019-6これらの原子が2億年かけて集まって、その内部で核融合反応が起こり、周期表26番目の鉄(Fe)までの元素が生まれました。これが第一世代の恒星です。星には寿命があります。こうしてできた最初の恒星は、やがて膨張して爆発します。この爆発のエネルギーによって鉄よりも重い元素が作られました。
20161019-7このような誕生と死との繰り返しによって、宇宙には多くの星(銀河系)が生まれました。その一つ、天の川銀河に太陽系が生まれたのが46億年前、地球も一緒に生まれました。

さてここからは地球に焦点を絞ってお話していきましょう。地球は、大気圏、地殻、水圏、生物圏に分けられますが、地殻を構成する元素は、酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、、で酸素が48%を占めています。水圏(海)では、酸素が86%、水素が11%で、あとは塩素、ナトリウムです。

こうして46億年前に誕生した地球の上に、38億年前に生命が誕生しました。もちろんはじめは単細胞生物です。それが多細胞生物になったのが12億年前、我々の直接の先祖である哺乳類が進化した来たのが1.5から2億年前、大型の類人猿が誕生したのが2000万年前です。

さらにアフリカで現生のヒトHomo sapiensが出現したのが20万年前だと言われています。もちろん、この間にもう少し古いヒトのご先祖様、例えばHomo electusなどがいました。ヒトは10万年前にアフリカを出て世界中に分布を広げ、日本にたどり着いたのが3万年前でした。
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ヒトの体は35種類の元素からなるといいましたが、それではどんな組成になっているのでしょうか。酸素が一番多くて65%、次が炭素で18%、水素が10%、窒素が3%、あとはカルシウム、リン、その他の元素です。ただし数の比率でいうと、水素が一番多くて63%、酸素25%、炭素9%、窒素1.5%です。水素原子が一番多いんですね。
20161019-9今あげたのは多量元素で、少量元素として硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウムがあります。さら微量元素として、鉄、亜鉛、マンガン、銅などがあり、超微量元素としてヨウ素、コバルトなどがあります。これらの金属はビタミンに含まれて酵素の働きを助けたり、ホルモンに含まれていたりします。微量でもとても大切な元素なんですね。
20161019-10周期表に書き込んでみると、こんな分布をしています。多量元素と少量元素は周期表の3周目+4周目の最初の2つまでに限られています。
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こうして宇宙の誕生から今の君たち、私の身体を見てくると、一番多い水素原子は、最初に誕生した元素である水素を受け継いでいることになります。原子は消滅することがないからです。地球に存在するすべてのもの(物と生き物)は、同じ元素(原子)を使いまわす仲間であり、みんなは星のかけらなのです。これが今日のとても大事なメッセージです。
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残りの時間で「新しい元素は作れるか」というお話をします。今年の6月に新聞に113番目の元素に理化学研究所がニホニウムという名前の案を提出したという記事が載りました。みんなが持っている理科の副教材に載っている周期表は、113、115、117、118が空白になっているはずです。
20161019-14このうちの113番目がニホニウムという名前が与えられ、これが国際的に認められるでしょう。チームリーダーである森田浩介博士が理研で2004、2005、2012年に発見というか作り出しました。30Znと83Biをぶつけて、足して113になるようにして作り出したのです。100兆回やって、たった3個だけ成功したのです。

このほか今年は、115がモスコビウム、117がテネシン、118がオガネソンという名前が提案されていて、118番目まで埋まったことになります。自然に存在する元素は92番のウランまでで、93から後の元素はいずれも人工的につくられた元素で、104番以降の元素は寿命の短いものばかりです。ちなみにニホニウムの半減期は0.0003秒です。129番以降の新しい元素はどこまで作れるか?わかりませんが、比較的安定な126番が次につくられるかもしれません。

ちょうど時間になりました。これで終わります。ありがとうございました。
20161019-13熱心にメモを取っている生徒さんがいました。聞いてみると「面白かった」という感想でした。
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この授業に関係する図表が、文部科学省の下記のサイト「一家に一枚ポスター」に掲載されています。この中の「宇宙図2013」と「元素周期表」です。PDFファイルをダウンロードできます。
一家に一枚ポスター
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3コマの講義が終了したのち、校長室で校長先生と歓談しました。その席上で、今年の夏休みに理科自由研究を募り、各学年の生徒から多数の応募があったこと、優秀賞を選定し、そのうち10名の生徒にプレゼンをしてもらったことを、資料をもとにお聞きしました。理科の興味を高め深めるうえで効果があったということでした。SSISSが支援している八王子PTA連合主催のコンクールについてお話をしました。