古川義純会員が、10月25日午前中に狛江市第四中学校の2年生3クラス90名に対して、「雪と氷の科学-氷の結晶ができる様子を観察してみようー」というタイトルで、実験授業を行いました。
古川会員の準備は周到で、札幌から冷凍庫と、その中に石鹸膜を作る針金製の輪、氷の分子模型、その他の小物などを入れて送ってあり、理科室にはその冷凍庫の電源が入って鎮座していました。
準備が整ったところで時間になり、生徒が理科室に入ってきます。授業の始まりです。
自己紹介ののちに、まずは雪はどんな形をしているかしらという質問。これは大体、みんな六角形と答えます。次に下の写真にあるように細い筆の先につけた雪の拡大写真を見せて大きさを質問。どのくらいの大きさかな?
生徒たちから、いろいろな大きさの声が飛びますが、みんなの答は0.1mmとか、小さめが多いようです。この写真の雪の大きさは3mmです。細い筆で雪の結晶を集めて黒い布(毛足のあるビロードがいいそうです)の上に置いた写真が次のもの。大きさや形はいろいろあるんですね。同じ形の物は決してないと言われているんだそうです(最近、この定説が覆されたとか)。
雪の結晶は顕微鏡で拡大して観察します。
典型的な樹枝状結晶と角板状結晶。
この他にも扇型結晶、広幅結晶、星状結晶、樹枝付角板など、さまざまな名前が付けられています。また典型的な六角形の平面構造ではなく、角柱、針状、御幣などもあります。形の違いは結晶ができるときの水蒸気の濃度や温度などの条件によって決まります。中谷宇吉郎博士が「雪は天から送られた手紙」といった意味が分かりますね。
それでは雪の結晶はどのようにできるのでしょうか。もう物質の状態変化を学習していますね。水の三態は?、質問して答えてもらいます。そうですね、氷(固体)、水(液体)、水蒸気(気体)です。
雪の結晶は、水蒸気が氷になることによって生じます(凝華、これまでは昇華と言われてきた)。結晶が成長していくわけです。水分子は学習しましたよね、どんな構造ですか?(生徒に答えてもらって)そうですね。H2O、すなわち酸素原子が一つと水素原子が2つ、こんな角度で結合したものが水分子です。
これが氷の結晶の分子模型です。こっちの方向から見ると、六角形をしています。そのために雪の結晶は五角形でも八角形でもなく、六角形になるのです。
気体の水蒸気が直接、固体の氷になる場合と、水が氷になる場合があります。水から氷になる場合でも、条件を整えれば結晶が作られていく過程を見ることができます。
水蒸気から氷の結晶を作るのは時間がかかります。そこで工夫して、石鹸水に砂糖を混ぜ、針金製の輪に石鹸水の膜を作り、これを冷凍庫の中に入れてマイナス10度から20度に冷やすと、氷の結晶が成長していくのが見られます。砂糖は結晶の成長を抑えるために使っています。
冷凍庫を用意してあるので、みんなでやってみましょう。以後、班ごとに各自、石鹸膜を作って冷凍庫の庫内に入れて、氷の結晶の成長を観察しました。きれいに六角形に成長すると、みんな感嘆の声を上げていました。
どんな結晶ができるか、温度(冷凍庫内の位置)によって結晶のできる数やスピードが変わるか、ということにも注目してねと事前に言っておいたのだけれど、そこまでの観察できた人はあまりいませんでした。時間がなかったので仕方がありません。
この後、国際宇宙ステーション(ISS)の希望(日本の実験室)で宇宙で初めて氷の結晶を作った話をしました。やはり六角形なんです。
上空の雲の中で雨や雪ができることを、これから気象の単元のなかで学習するので、今日のことを思い出してくださいね。
それでは、これで終わります。「ありがとうございましたー」。楽しい授業でした。
古川会員は北海道大学低温科学研究所の名誉教授で、相転移ダイナミクス分野に所属し、雪の結晶の成長や氷の結晶表面のことを研究されてきました。雪や氷の結晶成長の基礎についての詳しい説明は、同研究所の下記のページをご覧ください。