日江井榮二郎会員が、11月10日にNPO法人東京雑学大学の公開講座を多摩交流センター会議室で行いました。「陽の光ー太陽の恵み」というタイトルです。東京雑学大学は、生涯学習の推進、まちづくりの推進、文化、芸術、スポーツの振興を図るために、東京西部地域の数か所の会場で、毎週、さまざまな分野で活動する講師を招いて講義を行っている団体です。
会場には25名の参加がありましたが、この公開講座はインターネットを使って中継されていたので、他の会場でも多くの受講者がいたものと思われます。
講演の内容は以下の通りです。
まず宇宙の誕生、その時空間の宏大さ、悠久な時の流れを、国立天文台製作の動画を使って説明し、このような時空間なかで、太陽が誕生し、成長しつつあるという現代天文学の考え方を話しました。
最近のアルマ電波望遠鏡(チリのアンデス山中にあります)による星の誕生の様子や、科学衛星による詳細な太陽活動の観察結果を見せ、これらの現象には、プラズマと磁気との密接な相互作用が見られ、その諸活動の解釈には未だ解決されていない点があることを話しました。
(写真は国立天文台アルマ望遠鏡のページより)
地上のありとあらゆる生き物は、太陽光のエネルギーを享けて命を保っています。太陽光のエネルギーは太陽定数として理科年表に表示されています。太陽定数というのは、地球大気表面の単位面積(1平方メートル)あたりに1秒間、垂直に入射する太陽の仕事率のことです。この値は、1平方メートル当たり1.35kW、あるいは、1平方センチメートル当たり毎分1.96カロリーです。
人工衛星による測定によると、太陽定数は太陽の11年活動周期に伴ってわずかに変動し、活発な時には静かな時期に比べて約0.1%大きいのですが、その変化量はわずかなものなので、定数として扱われています。
(図はWikipediaのImage from Global Artより)
太陽定数は、地球大気の吸収が無い地球大気圏外での値であり、大気や雲などによって反射・吸収され、また入射角があるので、地上に到達したときの値は、その約半分となります。いま、1平方センチメートル当たり毎分1カロリーが地上に到達しているとすると、1坪の面積が2時間太陽光を受けると、そのエネルギーは4千キロカロリーとなります。もし人間が光合成可能な生き物であれば、代謝に必要なエネルギーは、太陽光から十分、得られることになります。
(葉緑体を体内に持つウミウシの一種。体内に取り込んだ藻の葉緑体で生きていける。写真はここからで、元の写真はEOL Learning and Education Groupより)
経済産業省資源エネルギー庁が発表している平成27年度年次報告書によると、世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は2014年には石油換算で129億トンに達したとあります。これは5.4x10^20ジュールに相当します。一方、地球に注がれる太陽光は1年間で5.4x10^24ジュールに達し、これは全人類が消費しているエネルギー量の1万倍も多いことになります。
太陽光のエネルギーは、未だ十分活用されていないのが現状です。地球温暖化ガス削減に向けて、人間の「チエ」が求められているとおもいます。