私立聖徳学園小学校での活動(2)

和田勝会員が6月25日の午後に、私立聖徳学院小学校の理科特別授業で6月4日に続いて2回目の実験授業を行いました。予定では、6月4日に続いて翌週の6月11日に行うはずでしたが、台風5号が関東地方に接近し大雨になるという予報のために、延期になったのです。

当日、少し早めに理科実験室に入ると、窓際にタマネギが容器に乗って並んでいました。前回の宿題をちゃんとやっているようです。予定の1週間ではなく3週間たっているので、根はだいぶ伸びていて、コップの中を満たしていました。上の写真では、ペットボトルを切ったものに載せてあります(ここから借用)。我が家でやったものは、ここまでたくさん発根しませんでした。小さなコップだと狭いので、水中の酸素が不足していたようです。

さて、授業の開始とともに、タマネギをコップに載せて置いておいたら、根はどんなふうになったかを聞きました。最初だったからか、あまり活発な返事はありませんでしたが、「下に伸びる」という答えを引き出しました。それじゃあ、どうして下に伸びることができるの?
「細胞の数が増えるから」と、小さな声で反応。こちらは大きな声で、「そう、細胞の数が増えるんだね!」という出だしから、生き物は細胞の数を増やして大きくなる、植物の場合は、その場所が、根の先端近くと、芽生えの頂端にあることを説明しました。

ここからタマネギの根端分裂組織の観察に入りました。あらかじ固定して70%エタノールに保存しておいたタマネギの根の先の方を、およそ3%の温塩酸中に入れて解離を進めたものを、児童に配りました。

解離した根をスライドグラスに載せて、もう一枚のスライドグラスを十字になるように置き、上から強く押し付けます。これで根端を含む先端部は、ほぼ細胞が一層に並びます。次に染色液をたらし、10分ほど置きます。時間が経ったら、カバーグラスをかけて余分な染色液をティッシュペーパーでふき取り、顕微鏡で観察します。

次の写真は、拡げた根端分裂組織の写真です。ここより借用
根元の部分にある細胞とは異なり、明らかに丸っこい細胞が集まっているのがわかります。この部分を丁寧に探して、分裂像を見つけます。本来は、このような分裂している細胞の像がみられるはずでしたが、、、。

見つかりませんでした。右側にあるような、核の中が明らかに緩くなって、染色体になろうとする分裂の前期の像はありましたが、明瞭な染色体が見える細胞の像はありませんでした。上の写真は、このページから借用しています。

黒板を使って、少し説明しました。細胞、核、細胞分裂、染色体という用語は、頭の隅の残しておいてください、中学校になると学習します、と言いながら。

先生も児童も、ちょっと不完全燃焼だったかも。

気を取り直して、持って行ったウニの発生の動画を見せました。このように分裂を繰り返して、体ができていくこと、皆もお母さんのおなかの中で、似たように細胞が分裂を繰り返して、生まれてきたんだ、と説明しました。

カメラは持って行ったのですが、顕微鏡写真を撮る時間はありませんでした。そのため、他のサイトの写真をお借りして説明しています。それらのサイトを作成された方にお礼申し上げます。

反省点です。細胞分裂が盛んだという午前10時前後に固定しているのですが、分裂像は見つかりませんでした。分裂を一気の起こすための工夫が必要だと感じました。このページがそのヒントが載っています。

八王子市立高尾山学園での活動(2)

有山正孝会員が6月19日の午後、八王子市立高尾山学園で、「電流の働き」というタイトルで理科実験授業を行いました。参加した生徒は3名、教員は、中学理科教員が4名でした。

受講者は全員中学生でしたが、電流について、すでに学習している生徒と学習していない生徒が混ざっていたので、次のような前置きから始めました。

私たちが毎日暮らしてゆく中で、「電気」は不可欠なものであるし、自然界の多くの事象に「電気」がかかわっています。にもかかわらず、「電気」は目にも見えないし、匂いもない、形もなくて掴むこともできないので、よくわからないと思ってしまう。その一方で、感電、漏電と云うようなことが話題になることがあって、ちょっと怖いと思ってしまいがちです。
しかしながら、「電気」の性質を正しく理解することによって、安全に利用できるのですから、小学校で学習したことと、日常の生活の中で体験していることを改めて復習しながら、頭の中を整理してもらうのが今日の授業の目的です。

小学校で勉強したり日常生活の中で体験して知っている電気のあれこれ
皆さんは小学校の理科で電気の通りみち、電池、電磁石、電気による発熱、電気の利用などについて学んだはずです。また、電池に電線をつなぐと電流が流れて豆電球が光ったりすること、家庭のコンセントに電気器具のプラグを差し込めば電流が流れていろいろな働きをすることを経験していると思います。
そして電池から取りだす電流は直流、コンセントから取りだす電流は交流であるということ、電流の強さ=電圧/抵抗であるということなどを知っていると思います。

電流、電池ってな―に
ここまでの説明では、電池や電流を説明なしで使ってきましたが、これらは何でしょうか。

わたしたちが住んでい宇宙には、2種類の、そして2種類だけの電気が存在することが確かめられています。この2つをそれぞれプラスの電氣、マイナスの電氣と名付けています。

ふつうは両者はペアになっていて、外からはその存在が見えません。何かの仕組みで両者が引き離されて、プラスの電氣ばかり、あるいはマイナスの電気ばかりが集まると、不安定な状態になります(電位差という言葉はあえて使わず)。そして両者が(不正確な表現ではあるが)一緒になろうとするときに、電流が発生します。

自然にそういうことが起きる例が雷であり、乾燥状態でセーターを脱ぐとき、頭髪が引っ張られてパチパチ云うのもその例です(静電気)。

雷の電気はいまのところ利用できませんが、18世紀後半から、プラスの電氣とマイナスの電気を人工的に引き離して、必要なときに電流を取りだせる装置が作りだされました。その一つが、上で説明した化学反応を利用したボルタ電池です。もう一つは、これから説明する電磁誘導を利用した発電機です。
ここからが本番です。それでは実験を始めましょう。

電流の発熱作用
実験1 熱あるいは光の発生

電熱器(ニクロム線むき出しの古いタイプのもの)と白熱電球を使って、電流を流すと熱(あるいは光)が発生することを観察します。

電流の磁気作用
実験2 電流の周りに生じる磁界の観察
導線中を電流が流れると、磁場が発生します。コイルにすると強い磁場を得ることができます。
電池の情報サイトより借用

これを観察してみましょう。
1)生徒に銅丸棒(2㎜φ、40㎝)、単1電池2個、クリップ付導線、磁針を与え、銅丸棒に電流を流してながら、いろいろの向きで磁針に近づけ、磁針の動きを観察してもらいました。ついでに銅丸棒の発熱を実感してもらいました。

2)手製のやや大型のコイルに電流を流し、発生する磁力線を複数の小磁針を並べて観察してもらいました。電流(銅線)を取り巻いて同心円状の磁力線ができるのがわかります。

実験3 電磁石
小学校の復習として、電磁石の働きを確認してもらいました。

実験4 電磁振り子(電気ブランコ)
実験2で、電流の流れている導線を近づけると、磁針に力が働いて動くことを観察しました。それでは、磁石の方が動かなかったらどうなる?という質問を発して、確かめてみることにします。

銅線で作ったブランコに電流を流し、その下端の座板にあたる部分を馬蹄形磁石の極の間に置くとブランコが跳ね上がります。電流の向きを変えると振れる向きが変わります。
このことから、磁界の中で電流に力が働くことが確認できます。

実験5 振動から回転へ
実験4では前後に触れる振動でした。磁石と電流を使って、これを回転運動にするには工夫が必要です。器械体操の大車輪からの連想で、電気ブランコを振動から回転に発展させるクリップモーターの完成品を示して、その工夫を説明しました。これでモーターの原理がわかりました!

実験6 リニアモーターの原理

2本の銅丸棒をレールのように並べて固定し、その間にフェライト磁石をN極を上になるように並べて固定します。銅丸棒の一方を電池のプラス極に、他方をマイナス極につなぎ、2本をまたいで短い銅丸棒をのせると転がりだします。電池の極を入れ替えると、逆の向きに転がります。これがリニアモーターカーが動く原理です。

電磁誘導
磁石と導線による回路を近づけたり遠ざけたりすると、電磁誘導という現象が起こります。動かない場合は、図をクリックしてください。別画面で動きます。レンツの法則わかりやすい高校物理の部屋から借用

実験7 コイルに発生する電流
1,000回以上、巻いた手巻きのコイルと検流計を使ってつくった装置で、上の図にあるようにネオジム磁石を近づけたり遠ざけたりすると、検流計の針が左右に振れて、コイルの中を電流が流れることを観察しました。

下の図で、左からN極が近づくと、これに反発するようにコイルの左側がN極になるようにフレミングの右手の法則に従って電流が流れ、離れ始めると、逆にN極を引き寄せるようにコイルの右側がN極になるように電流が流れるのです。つまり、現状を維持して変化を妨げるように、電流が発生するのです。

アルファ工業株式会社のページから借用

ついでにネオジム磁石について説明しました。ネオジム磁石はネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする磁石で、永久磁石のうちでもっとも磁力が強いことで知られています。実験7の写真の手に持った棒の先にある四角いものがネオジム磁石です。

実験8 渦電流
クリアファイルに銅板を挟んで、斜めに立てかけて斜面を造ります。銅板の入っていない部分に、ネオジム磁石を載せるとストンと滑り落ちます。しかし銅板が挟んである部分に載せると、磁石は大きな摩擦があるかのようにゆっくり滑り落ちます。
アルミニウムのナベブタでツマミがねじ込み式に取り付けてあるものを使って、ツマミを反対側、つまりナベフタの内側に付け替えます。これをよく滑る板の上に裏返しに置くと、ネジの頭が軸となってコマのように回せます。

このナベブタで作ったコマを静止させておいて、縁に沿ってネオジム磁石をゆっくり動かすと、それにつれてナベブタが廻り始めます。アルミニウムは磁石に反応しないはずなのに(実際磁石の力を受けないことを確かめています)、何故でしょう?

種明かしをすると、導体(磁石に反応しないけれどアルミニウムも導体です)の板に対して磁石を近づけたり遠ざけたりすると、磁界の変化を妨げるように、導体の中に渦巻き状に電流が発生するのです。これがコイルや電磁石のような働きをして磁石と引き合うのです。斜面の場合も同じようなことが起きているのです。

これも電磁誘導によるもので、上に述べたように現状を維持しようとする働きによります。渦電流は誘導電動機の原理であり、渦電流ブレーキや電磁調理器に利用されています。

学園の先生方が声をかけてくださったので、最初は遠慮がちであった生徒も、次第に積極的になり、手を下して実験を行っていました。相応の効果があったのではないかと思います。

【広報からの補足】
盛りだくさんの実験ですが、有山会員のつぶやきによると、電流の本態は電子の流れだというところまで説明したかった、時間が足りなかった、ということでした。

今年(2018年)の11月に開かれる国際度量衡総会で、パリにあるキログラム原器が廃止され、代わりに普遍的な定数(プランク定数)から求めるものに変わります。これと同時にアンペアの定義も、正確に求められるようになった電子の電気素量から、定められることになりました。電流は、電子というマイナスの電荷をもった粒子の流れである、という実態に近づいたのですね。

このあたりのことは以下の本に詳しく書かれています。大変興味深い内容の本です。
臼田孝「新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる」ブルーバックスB2056 2018 講談社。

私立聖徳学園小学校での活動

和田勝会員が、6月4日の午後、私立聖徳学園小学校で「細胞から生き物を見てみよう」というテーマで、児童が主体となって観察・実験を行う理科特別授業を行いました。参加した児童は、5,6年生のこの授業を希望するもの27名で、他に理科教員2名が参加しました。

今年度の理科特別授業を実施するにあたり、どのようなことが実施可能かという打ち合わせのために、すでに4月19日の夕方、先方の三輪教諭と打ち合わせをおこない、上記のテーマで2回、続けて行うことになっていました。6月4日はその第1回目です。

1回目はいろいろな細胞を見てみることに。まずは興味を持ってもらうために、単細胞のゾウリムシを観察してもらいました。
シャーレにゾウリムシのいる水を入れ、黒い紙の上において虫眼鏡で見てもらいます。
白い小さなものが、ぞわぞわと動いています。

続いて簡単に顕微鏡の使い方の説明をして、顕微鏡でもっと拡大して見てもらいます。

ゾウリムシは動いているのでおもしろく、皆は追いかけるのに一生懸命、ここまででだいぶ時間を使ってしまいました。

続いて植物のタマネギの鱗茎葉の表皮の細胞の観察です(定番ですね)。
カッターナイフを使って各自で切り出します。
スケッチを各自が自発的にしています。

最後に、口を漱いで頬の内側の上皮細胞を綿棒でこすり取り、スライドグラスに移して、酢酸カーミンで染色して見てもらいました。
全員ではなかったですが、ヒトの上皮細胞を見ることができました。

来週に向けて宿題を出しました。コップに水を満たし、その上にタマネギを載せ、根が生えてくるの様子を観察してくださいと。

6月11日に続きます。