新型コロナの影響で、今年に入って1月の活動の後、予定していたいくつかの活動がキャンセルになりました。8月に入って少しずつ自粛が緩和され、今年度の第1回目の活動が行われました。
先陣を切ったのは小林憲正会員で、8月8日の午後に、江戸川区子ども未来館子どもアカデミー夏休みプログラムの一つとして、「宇宙人は左きき?右きき?」という魅力的なテーマで、小学校児童16名に実験授業が行われました。
前半は、パワーポイントのスライドを使って宇宙生物学(Astrobiology)の大きなテーマについてのお話です。宇宙生物学の3つの大きなテーマは、
1)私たち(地球人)はどのようにしてできたの?
2)地球以外にも生物はいるの?
3)わたしたちは、この先、どうなるの?
です。
1)のお話で、生命と非生命の違いとは?という問いかけから始まります。 生物とは生命を有するものですが、そもそも生命とは何でしょうか。 下の写真を見てください。地球上の生物の写真が並んでいます。
次の写真は石ころです。いろいろな色や形がありますが、生物ではないのはすぐにわかりますよね。
石ころの次の写真は、二足歩行のロボット「ロビ2」 の写真です( https://prtimes.jp/ より )。人間に近い形をしていて、コミュニケーションもできるようですが、生物ではないですよね。
生命とはなにかと定義するのは、なかなか難しいのですが、ここでは、細胞でできている、ものを取り込んで変化させる(すなわち代謝をする)、子孫を残す(すなわち繁殖する)ものであると定義をしておきましょう。
上の写真にあるような、地球上のいろいろな生物はどのように誕生したのでしょうか。ダーウィンの進化論、ミラーによる放電の実験、オパーリンによるコアセルベートの実験などを示して、地球生命がどのように誕生し、進化してきたのかを説明しました。
それでは、地球以外に生命が存在するでしょうか。質問を投げかけました。「いる」と答えた人が何人かいました。実際はどうでしょう。 今のところ、太陽系の惑星の中に生命の存在の証拠は見つかっていないが、 次のように考えられています。「もっとも生命存在の可能性が高いとされる火星においては、1975年から1976年にかけて行われたバイキング計画において生命探査が行われたが、生命の痕跡を検出することはできなかった。しかし、その後も火星生命の探索は行われている。このほか、地下に海の存在する可能性の高い木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥス、液体メタンやエタンによる海が存在する土星の衛星タイタンなども生命の存在する可能性があると考えられている。Wikipedia「生命」より」
給水タイムのを取った後の後半は、地球生物の形態や構成する物質の対称性について、実際に手を動かして学びました。まず、前の方のスライドで、ものを取り込んで変化させるという項目に矢印で「タンパク質を使う」とあったことを思い出しましょう。タンパク質は20種類のアミノ酸からなっていますが、地球生物が使っているアミノ酸は、非対称な物質なのです。タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類ありますが、 グリシンを除いていずれもL型なのです。下の図で、Rは側鎖を示し、例えばCH3ならアラニンになります。このことも、地球上の生物は共通の祖先から進化した証拠の一つとされています。
非対称性物質の例として、コガネムシと円偏光版を各テーブルに配り、コガネムシの羽根(液晶) を左と右円偏光板を通して観察すると、どのように違って見えるかを体験してもらいました。不思議なことに、左偏光板を通した場合には、コガネムシの翅の金属光沢の緑色はちゃんと見えるのに、右偏光板を通してみると黒く見えるのです。
これは、コガネムシの翅の表面を覆うキチン質の構造が、左円偏光を生じるようなものであることを示しています。このあたりの詳しいことは、ここやここを参照してください。
L型分子とD型分子の違いを実感してもらうために、黒い球に赤、青、緑、白の4つの球を均等につけた場合、2種類のものができること(あるいはそれしかできないこと) を分子模型で試してもらいました。1つは全く同じもの、もう1つは鏡像異性体(下の写真)になります。
以上のような観察・体験から、地球外生命のさまざまな可能性について考えてもらいました。