市川学園市川高等学校での活動

2024年3月14日に、町田武生会員が市川学園市川高等学校で開催された、SSH年度末生徒研究発表会に参加し、ポスター発表を視聴し、質疑を行いました(図と写真はすべて市川学園市川高等学校のSSHのページよりお借りしています)。

市川高等学校では、1年の12月に理系・文系の選択が決まると、理系を選択した生徒全員がテーマの設定を行い、2年生になると文献調査を経て、実験を行います。図にあるように、1年間にわたって「市川サイエンス」という授業で構想段階の発表会、実際の実験、中間発表会を経て、3月に最終のポスター発表会を行っています。

今年度は、2年生の理系選択生徒は230名で、発表件数は、数学10件、物理51件、化学48件、生物52件、地学10件の計171件でした。広い体育館にポスターが展示され、全体を3群に分け、発表のコアタイムの時間帯を決めて実施されました。

発表会に参加したのは、高2の生徒に加えて、この4月から課題研究に取り組む高1や、来校された研究者の方々の他、理数以外の全教科の教員も参加しました。

時間が短かすぎて、生物だけでも全てを視聴できませんでしたが、どの研究もかなりレベルが高く、1年間じっくりと取り組んできた成果が窺えました。おそらく、現象の中から課題を見出し、論理的に思考して研究を進めることを強く意識するように、指導が徹底しているのだと思われます。

これらの中から24件が県の課題研究発表会に出されました。この学校は研究指導能力の高い理科教員が30名以上いて、多岐にわたる生徒の研究課題に適切に対応していて、内外のさまざまなコンクールやコンテストに応募して次々に受賞するなど、SSHの理科課題研究の成功例と言えるでしょう。研究倫理や生命倫理などに背かない配慮が十二分になされていることも特筆されます。

今回はSSH第3期の最後の発表会でしたが、次期SSHも採択され、4月より新たな取り組みが実施されます。研究の終了後の発表よりは、中途での質疑応答の方が研究の進行には有益なので、SSISSとしては今後は中間発表会を見せていただきたいと強く思いました。

千葉県高校課題研究発表会

3月16日に、町田武生会員と和田勝会員が、千葉工業大学津田沼キャンパスでで行われた課題研究発表会に参加して、助言活動を行いました。

これは、SSHコンソーシアム千葉とサイエンススクールネット千葉主催による千葉県SSH指定校と理数科を設置している高等学校12校の生徒による課題研究発表会で、指導・助言者として上記2名が参加しました。我々以外に、県内外の大学などから21名の指導助言者が参加していました。受付で分厚い「千葉県高等学校課題研究発表会発表要旨集」と実施要項、それとコメントを書き込む用紙を挟んだバインダーが渡されました。指導助言者控室で打ち合わせがあり、各会場に分かれました。

午前中は口頭発で、物理10、化学12,生物13,地学7,数学・情報8件の発表があり、指定された生物会場2での割り振られた生物4課題の発表に対して指導・助言を行いました。下の写真は口頭発表会場の始まる前の風景です。

午後はポスター発表があり、物理52,化学53、生物65、地学18、数学・情報29、合計217件の発表がありました。生物65課題は前半と後半に分かれてポスター前での説明があり、我々は生物の2会場を回って、説明係の説明を聞き、コメントをしました。

課題のすべてを発表者の説明を聞き、ディスカッションすることはできなかったっが、やり取りをしたものはコメントシートに記入して提出しました。いずれの発表も熱心に取り組んでいる様子がうかがえました。ただ、実験計画が十分に考えてたてられていなかったり、ポスターに載せられたグラフの表示方法など、改善が必要だと思われるものもありました。

東村山第三中学校での活動(6)

2024年3月6日に、進藤哲央会員が東村山市立第三中学校で「原子の世界と放射線」というタイトルで、3年生全員を対象に、4クラスに分けて理科の出前授業を行いました。受講した生徒は40名のクラスで4回なので、トータル160名でした。一時的見学を含めて、先生も3-4名参加しています。

今回は「原子の世界と放射線」というタイトルで、ミクロな世界についてのお話や、不安定な原子核の崩壊とその時にでてくる放射線についての授業で、持参したGM計数管や霧箱を用いて放射線の様子を観察してみるという50分間の授業でした。

授業の初めに、1977年にイームズ事務所が作成した「Powers of Ten」の動画を視聴し、自然界の様々なスケールで現れる物理的様相を概観しました。この動画は、視点が10ずつ拡大して芝生に座った人から宇宙まで飛行したのち、再び元に戻って今度はヒトの体内に入っていき、原子核までたどり着くという動画です。授業では、ミクロな世界にフォーカスして、原子・分子・原子核あたりの話を中心に講義しました。

特に、原子核を構成する中性子の数が異なる、同位体と呼ばれる原子が存在することを説明しました。下の図は、「Powers of Ten」で表示されている、たぶん炭素原子の核の構造です。

不安定な原子核は、一定の寿命・半減期で崩壊して、その際にアルファ線やベータ線、ガンマ線などを放出すること、これらの放射線の正体は高エネルギーで飛び出してくるヘリウム原子核、電子、光などであることなどを解説しました(下の図は、ここからお借りしています)。

実験として、GM計数管を用いると、教室内で1分間に約20カウント程度が測定できることを実演してみせ、前撮りしておいた放射線源を用いたGM計数管を用いた測定の様子を動画で見せて、放射線の種類による物質の透過力の違いを実感してもらいました。

筆者は、RI室に入るときにこんなGM計数管を使っていましたが、今はこんな小さなガイガーカウンターがあるんですね。

最後に、持参した霧箱を用いて、天然鉱物から出てくる放射線の痕跡を実際に見てもらいました。霧箱で放射線の痕跡が見えるの原理は次の図の通りです(下の図は原子力科学館のページからお借りしました)。

この動画は東京都健康安全研究センターが作成したもので、そこからお借りしています。