第16回八王子市立中学校科学コンクール発表会・表彰式での活動

第16回八王子市中学校科学コンクール発表会と表彰式が、11月30日午後1時から4時まで、八王子教育センターで開催され、SSISS会員の伊藤眞人、大井みさほ、奥田治之、小林憲正、佐々田博之、進藤哲央、坪村太郎、西原 寛、 町田武生、和田 勝の10名が出席しました。

このコンクールは主催が八王子市教育委員会と八王子市立中学校PTA連合会、後援が八王子市立中学校長会で、オリンパス株式会社、NPO法人SSISS(科学技術振興のための教育改革支援計画)、コニカミノルタサイエンスドームが協賛をしています。

今年度は、33校から69題の自由研究作品が提出され、その中から先生たちによって最優秀賞1件、優秀賞1件、審査員特別奨励賞6件、ポスターイラスト賞2件、佳作12件が選考されました。

研究発表会・表彰式の開会式では、八王子市教育委員会の上野さんによる開会宣言で始まり、続いて参加団体の紹介が行われ、主催者である八王子市中学校PTA連合会の廣田貴子会長の挨拶がありました。続いて協賛団体を代表してオリンパス株式会社担当役員田代芳夫さんの挨拶があり、そののち来賓の紹介がありました。最後にこの1月に選出されたばかりの初宿(しやけ)和夫市長からの挨拶があり、開会式が終了し、受賞者と来賓たちの勢ぞろいの記念写真撮影が行われました。

開会式終了後、いよいよ発表会です。初めに奨励賞のポスターセッションが行われました。奨励賞は以下の6件です。

 「グリーンカーテンを使った快適な部屋づくり」
   松木中学校1年 大橋夏歩
 「風車の羽の形と生み出す力に関係はあるのか」
   七国中学校1年 中村郁杜
 「グラスハープ1音にかかる質量(g)と容積(ml)の関係を探る」
   中山中学校3年 奥村柴乃
 「環境推定研究-相模川で採掘した示相化石からー」
   南野中学校2年 石毛陽菜月
 「よみがえる野菜の秘密-野菜廃棄部から野菜を再生できるのか」
   松木中学校3年 笹原來実
 「浅川の魅力 GASA GASA」
   打越中学校3年 荒井柚花

下は、ポスター発表時の写真を、上の順に並べたものです(クリックすると拡大されます)。どの研究も、興味深いものでした。

6題を2つに分け、それぞれ10分ずつの発表が3回行われました。参加者はポスターの前に集まって説明を聞き、質問したりしました。

どの研究も、身近なことの疑問や触れたことから、例えば旅行先でサービスエリアにあったグリーンシェードを使った部屋に入ったら涼しかったことから、グリーンカーテンの効果を実際に作って試してみたり、河原で見つけた化石から過去の河川敷の環境を推定したりと、研究を進めていて、好感が持てました。

発表終了後、関係者は別室に移って協議し、審査員特別奨励賞のなかから、教育長賞、オリンパス賞、SSISS賞、コニカミノルタサイエンスドーム賞、校長会賞、中P連会長賞を選考しました。

その後、優秀賞、最優秀賞の順で、パワーポイントのスライドを使った15分間の発表・質疑応答が行われました。

  優秀賞 「骨を伝って音を聞くー骨伝導ー」
   第六中学校2年 次田優希
  最優秀賞「野球のバントをするときのコツを明らかにする研究」
   七国中学校1年 長尾 錬

優秀賞の骨伝導の研究は、父親が骨伝導イヤホンを使って音楽を聴いていたので、耳を使わずにどうやって音を聞いているのか不思議に思い、研究を始めたそうです。また最優秀賞のノックの研究では、中学に入って野球部に入部したが、練習でノックがうまくできないので、そのコツを知るために、ピッチングマシンとバット固定装置を自作して、さらにボールの軌道を判定するフィールドまで作成し、バットにボールを当てる位置、バットの前後上下の角度を変えて、打ち返したボールの軌道を求めています。こちらも身近なことから疑問や問題点を持ち、研究を進めていて素晴らしいと思いました。

すべての発表が終わった後、表彰式が行われました。最優秀賞には賞状とともにトロフィーと金メダル、優秀賞には賞状と銀メダル、奨励賞には賞状と銅メダルが授与されました。

また、SSISSからは副賞として、すべての受賞者にSSISS理事長の西原 寛・中田宗隆編著の「教養の化学―生命・環境・エネルギー」とSSISS理事の小林憲正著の「生命と非生命のあいだ ―地球で「奇跡」は起きたのか」が副賞として贈られました。

奨励賞の6件には、はそれぞれ教育長・オリンパス・SSISS・校長会・中P連会長・サイエンスドーム賞として表彰状を送っています(詳細は省略)。SSISS賞には、中山中学校3年の奥村紫乃さんの「グラスハープ1音にかかる質量と容積の関係を探る」を選定しています。

奥村さんは絶対音階の持ち主で、グラスハープの音色を聞き分け、下の写真のように一音階を再現しています。グラス内の水の量によって音階ができますが、SSISS会員の間で、ポスターセッションが終わった後も、なぜ水の量が多く空間の少ないほうが低い音なのか、議論してしまいました。縁を擦ることにより空間が振動して音を出すのだと思っていたのですが、実際はワイングラスが振動して音を出すようです。グラスの固有振動数は重量によって変わるので、重いほど振動数は小さくなり、音は低くなります。比重の異なる液体でも、ゼリー状にしても、液量は少し異なるが同様な結果でした。要するに、グラスの重さがカギなのですね。参考になる文献はここに

グラスハープでこんな音楽が奏でられるんですね。ちょっと脱線しました。

その後、SSISS代表として西原 寛理事長が講評を行いました。

ついで校長会上田 太校長の総括、中P連の荒木美奈副会長の謝辞、閉会宣言が行われて閉会しました。最後に受賞した生徒さんの集合写真、晴れやかな笑顔の写真、を撮影しました。  

一番最後に、今回参加したSSISS会員(十勇士)の写真を撮ってもらいました。9人しか写っていないのは、奥田会員が写真を撮る前に帰られたからです、残念。

市川学園市川高等学校での活動(2)

市川学園市川高等学校は、今年度から4期目のSSH指定を受け、2年生のうち理系生徒が課題研究を行うことになり、テーマ設定に向けて先行研究の調査を行い、それをもとに研究構想を練り上げて発表するポスター発表会が6月14日、17日、18日、19日と4日間にわたり、学園のコミュにティープラザで行わたことはすでに報告しました。この後、生徒たちは実験を実施し、ある程度まとまったものを口頭で発表する催しが、11月26日、27日、29日、12月2日の4日間にわたっておこなわれました。SSISSからは、伊藤眞人、小林憲正、進藤哲央、町田武生、和田 勝会員が参加し、質疑応答、指導助言を行いました。

数学、物理学、化学、生物学、地学の分野の、合計222件の発表が4日間にわたり、各日8会場で実施されました。会場が離れているために、それぞれの会員は、離れた会場へと移動を繰り返し、それぞれ実質8分の1以下にしか参加できませんでした。口頭発表は、座長や発表時間の管理などすべて生徒が運営していて、会場で聴いている生徒はほとんど移動していなかったので、口頭発表の訓練の側面があったものと思われます。

さて発表の内容ですが、極めてレベルの高い研究から初歩的なものまでと、さまざまな取り組みに触れることができ、生徒の実験研究に対する認識と旺盛な意欲とを知ることができました。ただし、その研究を行う意味、意義、必然性の詰めが甘い例や、研究計画の立案にあたって何をどのように調べればどのような結果が得られるかを、十分に考えていない例が散見され、やや残念に感じましたが、総じて発表はどれも良く考えられ準備されていて見事でした。

この発表会会期中の11月29日に、教員情報交換会が開催され、他校の教員等との意見交換がなされました。30名を超える理科教員を擁する当該校の課題研究の進め方、指導体制等が詳細に紹介され、研究の論理性、研究倫理の重要性などが強調されていました。懇談の中では、理科実験室を生徒が自由に使えるように開放して効果を上げていることが披露され、交換会に参加した各学校に大きなインパクトを与えていました。

発表会とは全く関係がないのですが、始まる前に待機のために案内された図書室の閲覧室の一角に、こたつの置いてある和室風の閲覧コーナーがありました。ちょっといい感じ。

千葉県立船橋高校での活動(4)

船橋高等学校のSSH課題研究の実施にあたり、メンター指導をすることになり、11月26日午後4時から5時半まで、町田武生、和田勝会員が第4回目の対面での助言・指導を行いました。

今年度、個別の指導を行って来た2年生5名の実験研究については、9月の千葉大学高校生理科研究発表会で一段落となりましたが、学年末までさらに補足充実させたいとして、11月26日16時から17時まで、当該校生物実験室で、改めて生徒たちと個別の議論を行いました。

1名は欠席で、4名の研究の補充実験や課題の検討を行い、それぞれに必要なアドバイスと助言を行いました。それらの中で、2件の研究課題はわれわれメンターの研究範囲を超えるものであったため、1件は依拠論文の著者に連絡をとってアドバイスをもらい、今後の研究の展開を図ることとしました。また、もう1件も物質の測定・同定についてその分野の専門家に相談して打開策を生徒に伝えました。もう一件は、大豆の発芽がうまくいかないということで、改めて最初の段階を試して、結果をメールで伝えてくれるように頼みました。

今回、初めて高校SSHの課題研究のメンターを依頼されたものの、専門外の分野には十分に対応できないので、SSH側に今後の対応・善後策を考えるように申し入れたいと思います。