千葉県立佐倉高校での活動(4)

2月8日に佐々田博之会員が、千葉県立佐倉高等学校で「マイ分光器を作り光源の性質を調べよう」というタイトルで実験授業を行いました。実際に光の分光を観察できる分光器の作成を目標に、2校時(2 x 45分)を使ってで簡易分光器を自作してもらい、様々な光源を観測しました。授業の一環ではなく、定員20名の募集に応募した1年生(6名)と2年生 ( 3名)が参加しました。

波動はまだ学習していないので、スライドを使って波動の説明を15分ほどで済ませ、製作と観察をを優先させました、

光は波動です。波には「回折」と「干渉」という性質があります。

分光器は、この光の2つの性質を利用して、回折格子の細いスリットを通過して分光した光を観察する装置です。

光源から出た光は、回折格子を通ると回折して広がりますが、真ん中の0次はすべての波長が直進して進むので白色となり、その左右に対称のスペクトルが表れます。

実際の製作は次の通りです。型紙に合わせて工作用紙を切って四角い筒を作り、筒形の開口部の一方にスリットを作り、反対側の開口部に回折格子シート500 line/mmをはり付けます。スリットが直接、視野に入らないように山型のガイドをつけ、片側のスペクトルを観察します。

1時間で全員が完成させることができました。作成した分光器を使って、各種の照明装置の光(Hg入り蛍光灯、LED蛍光灯、スマホの照明)、太陽光のフラウンホーファー線、スペクトルランプ(Ne, Ar, N2, O2, H2)の光を観測しました。

連続スペクトルについて、また元素は固有の波長の線スペクトルを持つことを説明しました。自作の装置で、綺麗なスペクトルが観測できて、生徒達も楽しんでいました。

分光器を持ち帰って色々な光源を見るように勧めました。

千葉県立船橋高校での活動(5)

2月1日の午前9時10分から12時まで行われた、千葉県立船橋高等学校でのSSH課題研究成果発表会に、町田武生会員と和田勝会員が参加して、指導助言を行いました。この発表会は、SSH第4期1年目の課題研究成果の発表会で、理数科1・2年生全員と普通科1・2年生若干名が発表を行い、県内高校教員、市内小中学校教員、生徒保護者、近隣中学校生徒、千葉大学留学生、運営指導協議員およびサイエンスメンターなど、およそ120名が参加して実施されました。

全部で53件のポスター発表が、8つの会場で1時間5分ずつの2つの時間帯に分かれて行われました。2年生が一人で行う理数の研究は、物理が9、数学が6,化学が7,地学が6、生物が10件あり、1年生がグループで行う研究は、物理が2,化学が2,地学が2,生物が2、数学が1件でした。

これに加えて、今年度から始まった「未踏挑戦フィールドワーク」という分野のものが6件ありました。

これは未解決の社会課題に取り組む試みで、今年度は東日本大震災後に福島県が抱える諸問題をテーマに、13名の生徒が8月に3日間、実際に福島第一原子力発電所や四倉漁港を視察し、現地の人々と対話し、また福島県立安積高校の生徒と議論をしてその結果を発表しあいました。これらのことをまとめて6件のポスターとして英語で発表されました。ポスターの前で、千葉大学の留学生たちとの質疑応答する場面が見られました。

我々は生物のメンターとして、生物教室を会場とした生物の発表を聞き、質疑応答などを行いました(下の写真の3枚目は船橋高校SSHページより借用)。いずれの発表も、最初のころからはずっと進展して、それなりにまとめられていました。

10件のうち、これまで4回あった相談の場に来た生徒の5件を指導助言してきましたが、十分に効果があったとは言えないところもあり、残念に思いました。書物や文献を十分に読んでいなくて、何のために何をするのかが曖昧なまま実験研究に取り組み、得られた結果の解釈ができていない例や、実験例数が少なく数値処理ができない例、要因が複雑で明確な結果が得られない例などがあったことです。また、植物を対象とした研究が多い中、動物が専門の我々だけで対応する今回のメンターシステムには若干の無理があったのかもしれません。今後、改善されるといいと思います。

生物の研究の場合、つねに「ばらつき」の問題があり、どうやって数値化して有意な差があることを確認すのかなど、実験計画の立て方、予備実験の必要性など、実験研究の進め方の指導が必要なのではないかと感じました。

会場が生物教室なので、水生動物が飼育されていました。そのうちの一つに、ウーパールーパーがいました。正式名称はメキシコサンショウウオ、英語名Axolotlですが、日本で一時期、ウーパールーパーとしてテレビなどで流行ったことを思い出しました。

船橋高校の生徒さんたちと来場者で、会場はかなり込み合っていて、発表会としては成功したのではないかと思いました。

県立相模原弥栄高等学校での活動

1月27日の午後に、小林憲正会員が神奈川県立相模原弥栄高等学校の「弥栄ワンダーラボ」(UZUME講座)の一環として、全学科・全学年向けに対して講義を行いました。この高校には、普通科(G)のほかにスポーツ科学科(S)、美術科(A)、音楽科(M)が置かれていて、それぞれの学科の英語名の頭文字をとって、SAGMとしゃれています。下の写真の垂れ幕にあるように、スポーツ特にサッカーが盛んで、多くのサッカープレイヤーを輩出しています(例えば川澄奈穂美)。

講義は「化学で探る生命の起源と地球外生命」というタイトルで、 1時間半の講演を前半と後半に分け、スライドを使って行いました。前半は「生命の起源や太陽系についてわかったこと」、後半は「生命の起源や地球外生命について、わかっていないこと」としました。部活の時間と重なったこともあり、聴講した生徒は多くありませんでしたが、美術科の生徒の参加もあり、また中村校長,PTA広報委員も参加してくれました。

前半部分では、地球に生命が誕生し進化してきたこと、地球上には多様な生物が生息しているが共通の特徴を備えていること、そのもとになったアミノ酸や核酸はどのようにして生じたのか、地球外にも生命のもとはあるのか(はやぶさ2の成果)、などのお話をしました。

後半では、右と左の問題、タンパク質と核酸のどちらが先に生まれたかか、地球に生命誕生の痕跡は残っていない、太陽系以外の生命は探せるの?

JAXAの月探査計画UZUMEによる調査が、手掛かりを与えてくれるかもしれないと話しました。火星にも月と同様に縦孔があります。

講演後に、質疑応答を行いました。

スライドの最後に、茂木健一郎さんと対談したYouTubeの動画が引用されています。1時間15分ほどで長いのですが、リンクを張っておきます。