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総会のお知らせ

平成30年度が始まっています、と書いたのが4月27日ですから、あっという間に5月になってしまうのは当然ですね。5月に開催される定例の総会のお知らせです。総会では、昨年度の決算及び今年度の活動方針と予算、ならびに定款の改正を諮る必要があります。

定款の改正というのは、平成28年6月1日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し、平成28年6月7日に公布されました。この改正で、NPO法人は貸借対照表を公告することが義務付けられました。公告の方法は、1)官報に掲載、2)日刊新聞紙に掲載、3)電子公告、4)公衆の見やすいところに掲示、があります。

本法人はすでに、貸借対照表を含む事業報告を、このサイトに載せているので、理事会は3)を採用し、その旨を定款第54条に付記する案を提案いたします。

ということで、下記の第14回通常総会へご参加くださるようお願いいたします。

日時:2018年5月19日(土)午後2時から3時
場所:立教池袋中学校・高等学校 地学実験室(4階)
(東京都豊島区西池袋5-16-5)
詳しい通常総会招集の通知及び資料は連休明けに郵送いたします。出席される場合は、同封の議案書の出欠欄に出席のしるしを付して捺印し、同封の返信用封筒(切手貼付済み)でご返送ください。

万一、ご欠席の場合は、議案書により、委任をするか、それぞれの議案に対して議決権を行使するか、それぞれの欄にしるしを付して捺印し、同封の返信用封筒(切手貼付済み)でご返送ください。総会はSSISSの意思決定会議であり、定款により定足数がありますので、お忘れにならないようにお願いいたします。

総会の後に、和田勝会員による講演会が行われます。タイトルは「ウグイスってなにもの? -その繁殖戦略とホルモン-」というタイトルです。どんなお話が聞けるか楽しみですね。

さらにこの後には、懇親会を開催します。といっても大げさなものではなく、近くの飲み屋さんで、楽しくワイワイと懇親を深める予定になっています。

というわけで総会にはぜひご参加ください。

また総会案内の封筒内には、今年度の「会費納入のお願い」の文書と振替用紙が同封されています。文書中の手順に従って会費の納入をお願いいたします。

平成30年度が始まっています

今年の桜の開花は全国的に早く、4月にはもう各地で花の盛りが過ぎてしまいましたね。桜に続いて様々な木の花、草花が順繰りに咲き競い、あっという間に4月が終わろうとしています。会員各位におかれましては、充実した時をお過ごしのことと思います。

さて、新しい年度が4月から始まって1か月が過ぎようとしています。昨年度の決算及び今年度の活動方針と予算を決める定例の総会が、下記のとおり開催されます。カレンダーに印をつけてしっかり心にとどめ、ご参加くださるようお願いいたします。

日時:2018年5月19日(土)午後2時から3時
場所:立教池袋中学校・高等学校 地学実験室(4階)
(東京都豊島区西池袋5-16-5)

今回は予告です。詳しい通常総会取集の通知及び資料は追って郵送いたします。出席される場合は、同封の議案書の出欠欄に出席のしるしを付して同封の返信用封筒(切手貼付済み)でご返送ください。会費納入のお願いも同封されていますので、よろしく。また、昨年同様、総会の後に講演会を企画しています。これにつきましても追ってお知らせいたします。

さて花の便りとともに、各地で様々な展覧会が開催されています。今回、このSSISSに関係する(?)美術展についてちょっとつぶやいてみますね。

SSISSの理事長である大井みさほさんが、東京都美術館で開催されている「大調和展」(会期4月26日~5月2日)に出展されているので、それで覗いてきました。大調和展とはすごい名前ですが、岸田劉生を再び画壇に登場させたかった武者小路実篤が創立して、昭和2年と3年に開催した展覧会に端を発しているそうです。岸田劉生の死により2回で解散となった後、昭和37年に再び武者小路を会長に再開されました。それからずっと続いて今年は第57回だそうです。大井みさほさんはこの会の会員で、毎年出展されているようです。

でもって東京都美術館に行くと、美術館では企画展であるプーシキン美術館展と並んで、複数の公募展が開催されていました。第1展示室が大調和展の会場です。
招待の葉書をもらっていたので、葉書に名前を書いて入り口で渡して中に入りました。油絵、パステル画、水彩画と、いずれも具象の大きな作品が壁を飾っています。小生、どうも緑色が好きなようで、緑色の多い作品が多く並んでいるので心安らかに眺めて回りました。
第5室に大井さんの作品があることになっていたのですが、見当たりません。もう一度回ってみると、、。
さっきしげしげと眺めていた空と雲と畑の絵の左側にありました。見逃していたのですね、すみません。懐古園初夏というタイトルの絵でした。
どっしりとした石垣が強く迫ってくる重厚な作品です。懐古園には5回通ったとおっしゃっていました。

SSISSの活動とは直接関係ないことでしたが、活動記録にある会員の姿とは別の面を知る良い機会として紹介しました。

羽村市立栄小学校での活動

木下宙会員が、3月12日の午後、羽村市栄小学校で4年生2クラスの児童40名余りと教員3名に対して、「はやぶさ2のリュウグウへの旅」というタイトルで授業を行いました。

小惑星探査機「はやぶさ2」は、2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIロケットにより打ち上げられました。2015年12月3日にスイングバイ航法によりリュウグウの軌道に飛び移り、リュウグウを追いかけています。予定では2018年6月末から7月初め頃にリュウグウに到達する予定です。
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/mission.htmlより

なお、小惑星、地球の起源、スイングバイ航法などの詳細については、2016年11月26日の狛江市立第二中学校での活動のページをご覧ください。

最近の新聞で、下のような写真を見た記憶がある方もいると思います。JAXAからプレスリリース(3月1日)された写真で、目的地のリュウグウを写真撮影することに成功したというものです。このときのリュウグウまでの距離はおよそ130万km、です。

JAXAプレスリリースページより。

この記事を投稿した3月19日11時58分の時点で、距離は789001.08kmとなり、数値は見ているうちにぐんぐん減って、リュウグウに近づいているのが実感できます。リュウグウまでの距離は、はやぶさ2プロジェクトのトップページに表示されています。

今後の予定では、2018年6月末から7月初め頃に小惑星「リュウグウ」に到着し、装置を使って表面と内部の物質採取し、1年半ほどリュウグウに滞在します。その後、2019年末ごろに小惑星を出発し、2020年末ごろに地球へ帰還する予定です。

はやぶさ2の科学的な目的は、太陽系初期に誕生したときの状態を保持していると考えられている小惑星から物質を採取して、太陽系誕生と、生命誕生のもとになった有機化合物などの情報を得ることにあります。

どうしてリュウグウを狙ったか、それはイトカワ(下の写真の左)とリュウグウ(同右)では、種類が異なるからです。イトカワはS型で、リュウグウはC型なのです。C型小惑星の方が、水や有機物が多く含まれていると考えられているのです。

小惑星イトカワの表面物質を採取し、艱難辛苦を乗り越えて地球に戻ってきた「はやぶさ」の旅についても話をしました。

はやぶさ2プロジェクトに関して詳しくはJAXAの該当ページをぜひご覧ください。面白い記事満載です。

市川学園市川高等学校での活動

廣田穣、細矢治夫、町田武生、和田勝会員が、3月10日の午後に、市川学園市川高等学校で開催されたSSH年度末課題研究成果発表会に参加し、生徒が発表する、数学を含む理科の成果を聴きました。市川高等学校はSSHの指定を受けているので、理系の高校2年生は全員が課題研究に取り組んでいます。SSISSは課題研究の計画の段階、中間発表会にも参加して、助言を行ってきています。今回は、その最終段階の発表を聴くことになります。

この日は「市川アカデミックディ」と称して、午前には高校生が教える理科・算数 小学生体験講座が開かれていて、近隣の小学生が参加し高校生が教えるというスタイルの催しがあったようです(参加していないのでこの表現ですが)。

「教えることは学ぶことだ」と実感している筆者にとっては、有意義な試みだと思います。

これと並行した午前中のもう一つのイベントは、中学生の研究発表、海外研修報告、高校生の代表生徒による課題研究発表が行われています。

さて、午後の部が生徒さんの司会で始まりました。広いアリーナにはパネルがたくさん並び、ポスター発表が展示されています。数学だけは口頭発表なので、ステージの両脇にブースが用意されていました。校長先生ではなく代理の方が開会のあいさつをしました。

発表は全部で138点あり、分野別では数学が10、物理が65、情報が6、化学が23、生物が34でした。上に述べたように数学だけは口頭発表、その他はすべてポスター発表でした。偶数番号と奇数番号に分け、1時間ずつで入れ替わりました。

生徒さんも、コメントシートをもって、熱心に聞き、発表の内容、発表者が工夫した点、感じたことを書きこんでいました。我々もそれに交じって発表を聴き、質問し、こうしたらよかったかも、とコメントしました。総じて研究の内容のバラエティーが増し、興味深い視点で行われた研究が多くありました。

課題研究に交じって、国内研修や海外研修の報告がありました。たとえば、「音で心の手を繋ぐ」や「フランスピアノ留学」、「オックスフォード海外研修」などです。異なる文化に触れて、多くのことを学んだことが記されていました。

また、「高校生が棚田を変える」という高校生ビジネスプランでグランプリを取得したもの、福島モニターツアーに参加した報告などの発表が掲示されていて、興味をひかれました。

八王子市立高尾山学園での活動(7)

町田武生会員が2月27日の午後、八王子市立高尾山学園で、「からだはさいぼうからできている」というタイトルで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は3名、教員が3名でした。

この実験授業のねらいは、身体を構成するさまざまな組織・細胞を顕微鏡で観察して、いのちが細胞により保たれていることを考えてみることです。

最初に、細胞の概容にふれた後、ヒトの体は、1個の卵から始まって、細胞総数およそ37兆個になること、そのうちおよそ26兆個は赤血球であること、神経細胞は5千億個できるが、その8割は死滅して、残るのは1千億個であることなどを示しました(下の図は上から順に、細胞の模式図、赤血球、神経細胞)。
  http://www.stnv.net/med/erythrocyte.htmより
  http://manabu-biology.com/archives/42271371.htmlより

次にマウスの解剖図を配布して、体を構成する器官・臓器の説明を行いました。顕微鏡を用いて、各人の口腔上皮細胞の観察を行ってもらいました。

ついで、用意した組織プレパラートで、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、甲状腺、大脳などを、顕微鏡で観察して、スケッチをしてもらいました(下の図は上から小腸、甲状腺)。
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/2anat/cn9/cn12/cn18/pg161.htmlより
  http://www.agri.tohoku.ac.jp/keitai/scope.htmlより

これらを見ながら、体を構成する細胞には、生涯にわたって分裂を続けるものがある一方、生まれた後は増えることなく、ずっと存続するものがあることを説明しました。筋肉細胞、脂肪細胞、卵細胞、神経細胞が後者の例であること、特に神経細胞の特異さを理解してもらおうと努めました。

生徒たちは進んで観察し、楽しんでいるように見えました。点と線で行うスケッチ画を、とりわけ楽しんでいる生徒がいました。

生きることが細胞によってもたらされていることを考え、命の大切さと結び付けて考えられるようにしたいと思い、そのように努力をしました。

私立聖徳学園小学校での活動

大井みさほ会員が、2月19日の午後、私立聖徳学園小学校で、「光とは何か」というテーマで、講義、演示実験、実験を含む特別授業を行いました。参加した児童は、5,6年生の理科希望者28名、理科教員が2名でした。この理化特別授業は、1年おきに実施してきていますが、毎回、少しずつ、内容は変わってきています。

先方の依頼により、レーザーについての話を長くしました。また、光が水中に入るときの屈折の説明を詳しくしました。

実験台にレーザーポインターと水槽を用意し、レーザー光を使って水槽内の水の中を通る光路および、反射、屈折の観察と実験を行ないました。

レーザー光が、透明なアクリル棒中を全反射して進む様子を演示実験で見せ、光ファイバーの中を通る様子も示しました。

回折格子片を配り、各自が工作用紙で簡易分光器をつくり、蛍光灯のスペクトルの観察を行いました。初めからやると時間がかかるので、工作用紙にはあらかじめ図面を描いておいてもらい、それを配布しました。2人の理科教員が実験を手伝ってくれたので、比較的スムースに工作することができました。

実験終了後に、学習したことのまとめを各児童に書いてもらって回収し、後から送ってくるとのこと、どんなことが書かれているか、楽しみです。

熱海ホテルニューアカオでの活動

和田勝会員が、熱海のホテルニューアカオで開催された東京ゴム薬品商同業会総会の後に、総会参加者向けに行われた講演会で、「ウグイスのお尻を追いかけて -マッチョであるのも結構、大変ー」というタイトルで、多数のスライドを使って講演しました。参加者は同会理事長をはじめ25名でした。

わかりやすく、なおかつおもしろく話してほしいと依頼されたので、40年、鳥の内分泌学の研究を行ってきたと自己紹介をした後、日本画に描かれた鳥の絵を示して、鳥の骨格から見て、脚の描き方はこれではおかしいので、とても気になります、というところから話を始めました。
上の左の絵、脚の描き方が気になります。鳥の骨格は次の図のようになっています。
この鳥の場合、大腿骨と膝は腹部の羽毛の中に隠れています。したがって、勝手に手を入れて直した右の図のように、かかとにあたる部分が後ろ側にあって、そこから跗蹠骨が前に伸びているはずです。ちなみに跗蹠骨はヒトの中足骨にあたり、ヒトでは複数あるけれど鳥類では融合して一本です。つまり、トリはつま先立ちで歩いているのです。でもこんな話から始めたら、わかりやすく、おもしろく、ではなくて、理屈っぽいって印象を与えたかも。

ちょうど当日は2月14日のバレンタインデーでした。この日がなんでチョコレートを贈る日になったかはともかく、昔から植物が芽吹き、鳥が囀り始める日とバレンタインの殉教と結びついて人々が祝うようになりました。冬至からほぼ2か月、日の長さが長くなったと感じ始めるころなのです。でもって生物季節の一つである、ウグイスの初鳴き日がちょうどこのころにあたります(地域によって異なりますが九州ではそうです。東京ではもう少し遅いかも)。

これをきっかけに、ウグイスの紹介。日本人は誰でも知っている鳥ですが、意外と研究されていないのです。それでウズラで培った知識や技術で、ウグイスの繁殖生理学の解明に乗り出したのです(ちょっと大げさ)。

ウグイスを使った研究成果のお話に入る前に、鳥についての一般的なこと、体を軽くして飛ぶためにどのような進化をしたのかと、繁殖の内分泌学のお話をしました(この辺りはこちらのページを見てね、まだ未完成だけど)。

野生の鳥であるウグイスの研究をしようとすると、捕獲しなければなりません。捕獲するためには環境省が発行する鳥獣捕獲許可証が必要です。許可証を取得するためには、委託を受けた山科鳥類研究所が行っている講習会に参加して、見極めテストに合格する必要があります。実習は新潟県福島潟にある観測ステーションで行われるので、何とかスケジュールを調整して参加しました。泊まり込みです。こうして捕獲許可証を取得してバンダーに一応なって、金属製の番号の入った足環をつけられるようになりました。プラスチック製の色足輪も購入しました。

ウグイスの紹介をした時に話したことですが、古くからおこなわれていたウグイスの飼養は、江戸時代にはとくに盛んになり、鳴き合わせが行われました。早く鳴き始めさせるために、蝋燭で昼の長さを長くする「夜飼い」が行われていました。そこで、霞ヶ浦で捕獲したウグイスを使って、夜飼いを行ってみました。
短日(8L16D)から長日(16L8D)に移して7日目になると囀り始め、血中テストステロン濃度も10倍近くに跳ね上がっていました。

さて、ここからがフィールドでの研究です。繁殖期になるべく多数のウグイスを捕獲しなければならないので、場所の選定が重要です。いろいろと情報を聞いて、東京大学付属秩父演習林をフィールドとすることに決めました。講義の合間を縫って、勤務地の千葉県市川市から、器材と学生を乗せた車を駆って、関越自動車道を花園インターまで走り、国道140号を西へ、秩父市を抜けて川俣にある東大の自炊宿舎まで走ります。2泊3日の日程で、これをほぼ毎週繰り返しました。

鳥類では多くの種に羽装の性的二型が見られますが、ウグイスの場合は羽装は雌雄で同じです。違いは体重で、オスはメスのほぼ二倍の体重があります。
演習林栃本地区の入川の沿って進んだ矢竹沢近辺での観察によると、オスは縄張りを構えて3月末から8月末まで囀り続け、複数のメスを縄張りに誘い、営巣、産卵、子育てをすべてメスに任せている一雄多雌の繁殖連略を取っていることが明らかになりました。

ここからはカスミ網を使った捕獲です。カスミ網を張って、録音した他個体の囀りを網の近くで再生すると、縄張り保有オスは興奮して盛んに囀り、場合によってはカスミ網に突進してかかってしまいます。かかったら網から外し、翼静脈を穿刺して、出血した静脈血をヘマトクリット管で吸い取ります。採決した後、ウイスの体重、翼長、跗蹠長を測定し、話してやります。たいてい、ウグイスはすぐに自分の縄張りに戻ります。ヘマトクリット管は宿舎に帰った後、遠心して上澄みをハミルトン注射器で吸い出して遠心チューブにとりわけ、研究室に持ち帰ってラジオイムノアッセイ法でテストステロンとコルチコステロンを測定します。

囀りを聞かせ始めてから30分の間(網にかかった場合はそれまでの間)に、囀りを聞かせ始めてから(プレイバック法)何分で囀り返したか、囀りと谷渡りの数は何回だったか数えます。結果の一部は以下の通りです。このグラフはさえずりの結果です。

雄性ホルモンであるテストステロンの血中濃度は、この間ずっと高いままでした。

詳しい結果は、小生の自前のページの研究タブー>ウグイスの項の原著論文をご覧ください。

これらの結果は、一雄一雌の繁殖戦略をとる鳴禽類の結果とは異なっています。一雄一雌の種では、メスが産卵し抱卵に入るころになると、オスは囀りを止め、餌を運んで子育てに参加します。これに対してウグイスは、マッチョをずっと維持するんですね。

ここまではプレイバック法で捕獲したので、縄張り保有オスだけを捕獲してデータを得ている可能性が高いので、プレイバックせずにカスミ網にかかるのを待って、うまく網にかかった個体から採血することにしました(パッシブネッティング)。縄張り保有オスかそうでないあぶれオス(フローター)かを確認するために、対象場所を狭めて、そこに縄張りを構えているオスを確定して、捕獲することにします。しかしこれは、言うは易しでも行うは難しです。ともかく時間がかかるのです。

こうして、なわばりを確定して精査すると、なわばり保有オスとあぶれオスの間で、体重、跗蹠長などの体格、血中テストステロンとコルチコステロンに差がありませんでした。今これを書いていて気が付いたのですが、この結果は論文にしてませんでした。ネガティブデータだから書きにくかったと感じたのでしょう(当時は)。でも、おもしろい結果が出ているので、今書いていて、論文にしておいた方がいいと感じました。たとえば捕獲法の違いによって、血中テストステロン濃度が異なります。
血中コルチコステロン濃度の方があまり差がみられません。ところがオスとメスでは、血中コルチコステロン濃度がかなり異なります。

さらに、適当なプライマーを決定して、マイクロサテライト法で親子判定をしました。
その結果、あぶれオスも子供を残している可能性が示唆されました。この結果は詰めが甘いのですが、可能性はかなり高いと思っています。

ウグイスは、どうしてこのような繁殖戦略をとっているのでしょうか。子孫をなるべく残すためには、オスから見たら

1)つがいを維持してメスをガードし、育雛にも参加して確実に雛を育てる
2)なるべく多くのメスを獲得し、多くの雛を残す努力をする

の二つの戦略があります。笹薮に適応したウグイスは、競争者がいないのでその豊富な資源を独占することができたのですが、ヘビなどによる高い捕食圧、カッコーによる托卵などのために、繁殖の失敗が多くみられるようです。したがって、2の戦略を取った方が有利だったのでしょう。そのために内分泌機構も、この繁殖戦略を支えるように進化したと考えられます。

生物の基本原則である進化は、身体的な特徴である形質だけでなく、繁殖戦略にも当てはまり、環境に適応してそれぞれの繁殖戦略が進化しているが、それを可能にしているのがホルモンによる生理学的な機構であることを強調しました。

講演が終わった後、鳥全般のものも含めて、たくさんの質問を受けました。

八王子市立高尾山学園での活動(6)

奥田治之会員が、2月13日の午後、八王子市立高尾山学園で、「日時計の話」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は4名、教員が3名でした。

初めに、日時計の原理(下記参照)を簡単に説明し、大昔から、季節の移り変わりや時間の変化を知るために利用されてきたこと、また、古今東西の様々な日時計の写真を見せて紹介しました。
  ロンドンKew Palace
  http://www.canadaclockmuseum.ca より
  スペイン・セビリア地方のMudejar門のもの  日大文理学部世田谷キャンパス内
http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/takaralarge28.htmより

日本の主な日時がある地図

そして、原理を理解すれば、だれでも、簡単に日時計が作れることを説明したのち、紙細工の日時計の型紙を渡して、生徒自ら作ってもらいました。

棒を立てれば影ができ、この影は太陽の動きに従って移動するので、そこから時刻を推定することができます。子供の頃、よくやりましたね。でもそれでは正確ではありません。上の写真にあるように、建てた棒(三角形ですが)の角度がキモです(ロンドンと世田谷の違)。キモは棒の傾きです。この角度はその地方の緯度になります。今回使った型紙には、これらの点を解決して、印刷してあります。

日時計のつくり方のページ(キャノンサイエンスラボ・キッズ)

幸い、当日は天気が良かったので、出来上がった日時計を使ってちゃんと時刻が読み取れることを体験してもらいました。簡単な道具でありながら、かなり正確な時刻が読み取れることにみんな感心していました。

このような観察をしながら、日時計を正しく使うためには、軸を真北に向けることが大切なこと、(地球の自転軸と、地磁気の軸がずれているため、磁石の示す北は正確でなく、東京付近では6度西に振れていること)、また、日本の標準時は東経135度(明石)が基準になっているので、経度が異なるときには、その補正をしなければならないこと(たとえば東京は明石から東へ5度離れているので、日時計の時刻から20分を引きます)、また、季節によって遅れ進みのあることなどを説明しました。

全体的に、原理をどこまで理解してもらったかは、よくわかりませんでしたが、ものづくりには熱心に取り組み、楽しんでもらえたと思いました。先生方にも、興味を持って聞いていただけたと思います。

日時計は、地球の自転と公転、緯度と経度などを深く学ぶ絶好のトピックだと思います。

日時計の原理の説明
英語版Wikipediaも詳しい

日時計の型紙制作ソフト(窓の杜)

八王子市立高尾山学園での活動(5)

和田勝会員が、1月30日の午後、八王子市立高尾山学園で、「細胞のお話」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は2名、教員が3名でした。

まず最初に、月探査船かぐやから撮影した、月平線の向こうを漆黒の宇宙空間をバックに青い地球が登ってくるJAXAとNHKが制作した動画を見せました。

続いてルイアームストロングが歌う「What a wonderful World」の動画を見せました。歌詞が英語なので、拙訳を印刷して渡しました。What a Wonderful World和訳2

https://youtu.be/HPcgM1MnDnI

この2つの動画を見ると、この広い宇宙空間に、生命体が存在するのは、太陽系第三惑星地球だけであることが強く印象付けられます。後者の動画では、多様な生物が地球上に生息している姿が生き生きと映し出されます。

その生き物ですが、大きなものは20mを越えるシロナガスクジラから小さなものは0.2mmのゾウリムシと、じつにバラエティーに富んでいます。
Blue whale size.svg
Wikipediaより

上の図では、ゾウリムシはヒトの足先の点にも満たない大きさです。大きな生物なら肉眼で見ることができますが、小さなゾウリムシは拡大する装置が必要です。それで、顕微鏡の登場です。

生徒は備え付けの顕微鏡を準備して、持参したゾウリムシをシャーレに配ります。ホールスライドグラスを使い、自由に観察してスケッチしてもらいました。

ゾウリムシといっても平たいわけではない。どんな形をしているのか、どのようにして泳ぐのかをじっくりと観察してもらいました。楽しんで観察していましたが、先生方の方が楽しんでいたかもしれません。回転しながら進む様子、何かにぶつかると反転して障害物を回避する動き、などとても興味深いものがあります。高倍率にして細胞の縁をよく見ると、繊毛がチラチラと動いているのが見えます。分裂をしようとしているゾウリムシを観察することができました。ラッキー。

下の動画は高校生物実験ですが参考に載せておきます(著作権は矢嶋正博さんにあります)。

これは単細胞生物、たった1個の細胞で何でもこなしてしまう。でも大きさは限られてしまいます。クジラの大きさの単細胞生物はいません。表面積と体積の比率が釣り合わなくなるからです。そのため、細胞1個の大きさはせいぜい0.02mmです。

でもって細胞は、細胞分裂によって数を増やし、役割分担をして体を構成するようになります。多細胞生物の誕生です。多細胞生物の例として、一番観察がしやすいタマネギの鱗茎葉の上皮細胞を薄く剥ぎ、酢酸カーミンで染色して観察してもらいました。

最後に、超音波によるヒトの発生の動画を見てもらいました。みんなは生まれる前、お母さんのお腹の中で、細胞の数を増やして大きくなって生まれてきたんだよ。すごいね!

八王子市立高尾山学園での活動(4)

廣田穣会員が、1月16日の午後、八王子市立高尾山学園で、「色のついたものと光を発するもの」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は4名、教員が3名でした。

事前の打ち合わせはメールで行い、20枚のスライドの原稿を学園側に送ってカラーコピーしてもらい、配布しました。当日は配布したコピーを見てもらいながら、スライドを映写して説明を行いました。

最初の30分ほどを使って、青い色の色紙、セロファン紙、青い液体のように青く見えるものと、青色LED、青色信号灯など、青い色を出すものを見せて、青色といっても、反射によるもの、透過によるもの、青い光を放射するものは、それぞれ異なる原理によって見えていることを理解してもらいました。

難しく言うと、光源色と物体色、さらに後者には表面色と透過色があるということです。

CCS株式会社光と色の話 第一部12回より

これを踏まえて、木の葉がなぜ緑色であるかを理解してもらい、補色の考えを紹介しました。

発光による色として、熱、紫外線、化学発光について説明をし、発光の例として炎色反応の実験を行いました。スチールウール上に、比較的多い量の金属塩を保持する新しい方法を採用することにより、強い炎色反応を得ることができました。