2月9日午後4時から5時半過ぎまで、和田勝会員が東村山市の東村山第三中学校の自然探求部の活動に参加し、「ゾウリムシで遊ぼう、学ぼう」というタイトルで、実験授業を行いました。参加したのは部員のうちの約25名、3年生が1名と後は1,2年生でした。福島恵美教諭と入江翔太副顧問が助っ人として手伝ってくれました。
和田会員は下見と事前の相談のために、2月3日に同校を訪問していて、そのときにワークシートの束を預かりました。福島教諭が、単細胞生物と多細胞物の違い、ゾウリムシの繊毛や摂食などのついて予想と調べた結果を書き込むようにと、事前に部員に配布して回収したものでした。最後の項目として、ゾウリムシや生物全般について、聞いてみたいことという項目があり、書き込みがありました。
さてそんなことがあって当日、早めに赴き、溶液の準備などを行いました。今回は繊毛の動きを止めるために、塩化ニッケルを使いました。
実験の項目としては、単細胞生物であるゾウリムシの運動(遊泳)、摂食(食物の取り込みと食胞形成)、収縮胞による浸透圧調節の観察を選びました。
ゾウリムシをスライドグラスにとり、どのように遊泳しているかを観察してもらい、この動きが起こる理由を考えてもらいました。塩化ニッケル水溶液を加えると繊毛運動が停止することも観察しました。また、ヒトでは繊毛は気管上皮細胞にあることを説明しました。
10㎝程の2本の細いビニールチューブを両端と真ん中の3か所を輪ゴムで束ね、片方をずらすとチューブが曲がることを示し、繊毛の中にはこのようなチューブが9本あって、ずれることにより屈曲することを説明しました。筋肉による収縮との違いも説明しました。
次に、あらかじめ用意しておいた乾燥酵母菌をコンゴーレッドで染色したものを与え、ゾウリムシが食胞として取り込むことを観察してもらいました。下の写真のようになる予定でしたが、体の中が赤くなっているのがわかりましたが、酵母菌の数が少し多すぎたのであまりうまく観察できませんでした。写真は次の論文よりお借りしています。
案細胞生物のゾウリムシでは、食胞として取り込み、そこの消化酵素が融合して分解するのですが、ヒトでは消化管の内部で消化酵素によって分解して、それを小腸上皮細胞が取り込むことを説明しました。
次に収縮胞を観察してもらいました(下の画像は、慶応大学日吉キャンパス特色GPのページよりお借りしています)。単位時間当たりの収縮法の動きを数えてもらい、外部の塩濃度を濃いものにした時の回数と比較してもらいました。収縮法の動きは観察できたものの、回数の変化までは観察できない生徒がほとんどでした。生きものにとって、とても重要な浸透圧調節について説明しました。
最後に単細胞生物は、一つの細胞ですべてをこなすが、多細胞生物では分業していることを説明しました。
生徒たちはみな熱心で、それぞれの課題に取り組んでいました。事前に福島先生がワークシートを配り、生徒が予習をしているのが有効だったのだと思います。
ワークシートには質問事項があって、いくつもの質問が書き込まれていました。後で、質問に対する回答をまとめて送り、配布してもらいました。2,3の質問と回答を載せておきます。
質問:どうしていろいろな形の微生物が居るのか?
回答:微生物に限らず、生物はいろいろな形のものがいますよね。身の回りを見ても、スズメが居たり、イヌやネコがいたりします。生物はそのものが住んでいる環境に合うように進化してきました。その結果、形が変わったのです。微生物もその例外ではありません。
質問:どうして生物には個体差があるのか?
回答:この「どうして」という質問に答えるのはなかなか難しいです。特別な理由があるわけではないからです。「どのようにして」という質問の形に変えると、その仕組みを説明することは可能です。生物の形やはたらきは、その生物の持つ遺伝情報によって決まります。この遺伝情報に個体差があるのです。たとえばヒトの背の高さは複数の遺伝情報によって決まります。この複数の遺伝情報に個体差があるので、その組み合わせである実際の背の高さには、低い人から高い人までのばらつきが生まれるのです。
質問:どうしてゾウリムシはもっと大きい生物に進化せずに、あの小さな体にたどりついたのか?
回答:この「どうして」という質問に答えるのはなかなか難しいです、特別な理由があるわけではないからです。しいて言えば、ゾウリムシは現在生息している環境に適応して子孫を残しているので、体を大きくしたり、形を変えたりするような環境からの圧力(淘汰圧といいます)がかかっていないと思われます。そのために今の形でいつづけるのです。