「活動記録」カテゴリーアーカイブ

高尾山学園での活動

奥田治之会員が、11月5日の夕方から高尾山学園で、「月の鑑賞会 -お盆のような月、鏡のような月」というタイトルで、文字通りの月の鑑賞会と月にまつわるお話をスライドを使っておこないました。有山正孝会員もお手伝いで参加しました。受講したのは同学園の生徒20名、その保護者5名、同学園の教職員13名でした。

この日は満月ではなく月齢8.0でしたが、後で書くように月はきれいに見えました。夕方、会を始めた時は雲が出ていたので、最初にスライドを使って月についてお話をすることになりました。タイトルは上に書いたように「お盆のような月、鏡のような月」です。たしかに月というと、すぐに「♪出た、出た月が、まあるいまあるいまんまるい、盆のような月が」の歌が思い起こされます。副題に、「不思議いっぱいなお月さま」とあります。いつも見慣れていて、当たり前と思っている月に、どんな不思議があるのでしょうか。さあ、始まりです。

最初のスライドに映し出されたのは、東の空に昇った月。大きくて少し赤っぽく見えます。

月の見かけの大きさ(角直径)は約0.5度で、実はこれは太陽の見かけの大きさと同じです。月が上空に来た時は上の写真よりも小さく見えますが、大きさが変わるわけではありません。5円玉あるいは50円玉を持って腕を伸ばし、穴を通して月を見てください。ちょうど穴にすっぽりおさまる大きさです。上った直後の月も上空の月も、同じように穴にぴったり収まるので、大きさが変化したわけではないことが分かります。月は地球に最も近い天体で、地球の直径の約30倍、距離にして38万km離れた位置にあります。上の数値から月の大きさ(直径)が計算できますね。

Wikipedia 「月」より

どうして地平線に近い月は大きく見えるのか、実はまだよくわかっていないそうです。有力な説は、これは錯視の一種で、地平線に近い方が比較する地上のものがあるからだといわれています(日本心理学会のページより)。上に書いたように太陽も見かけの視度はほぼ同じなので、5円玉の穴に収まりますが、太陽をそのように見ないでくださいね、眼を痛めますから。

月は太陽と並んで、誰もがふだんから目にする、最もなじみ深い天体です。昔は夜道の明かりとして利用されましたし、暦(太陰暦)として生活に密着したものでした。月の満ち欠けは、潮の満ち干と関係があり、そのため、特に海産生物の生活リズムと深い関係があります。たとえば、身近なところではクサフグやアカテガニの産卵行動、あるいはウミガメやサンゴの産卵行動と関連しています。サンゴの放卵が一斉に起こるのをテレビで見たことがある人もいるでしょう。いずれも大潮のときに起こります。そのため漁師は昔から月の満ち欠けで出漁を判断していました。

上で触れた「お月様」以外にも、「月の砂漠」や「朧月夜」などの童謡に歌われ、「荒城の月」や「Moon River」など月がタイトルに入った名曲がいっぱいあります。和歌や俳句にもうたわれていますよね、それだけ身近なのです。そうそう、日本にはお団子とススキを供えて中秋の名月をめでるお月見があります。最近はあまり見かけなくなった気がしますが。

上のお月見のイラストでは、月の中でウサギが餅つきをしています。日本では昔から、冒頭の写真に見える月の表面の黒い部分を、ウサギが餅つきをしていると見立てていますが(でも2頭はいませんね)、カニに見立てたり、女性の横顔に見立てる国・地域もあるようです。この黒い部分は「海」とよばれていますが、実際に水をたたえた海があるわけではありません。

月は太陽のように自分で光っているわけではありません。太陽の光を反射しているのです。反射した光が地球に到達して白く見え、反射が少ない部分は黒く見えているのです。

盆のように丸く、鏡のように輝く月、でも月は球体で平面ではありません。もしも鏡のように反射するのなら、次の宇宙船から見た地球に太陽が当たっている写真のように、狭い範囲が光っているだけなはずです。

月に当てはめれば、次のイラストのように、太陽の位置によって光る位置が変わるけれど、一点だけが光るはずです。

月は球体なのに、盆のように丸いと形容されます。たしかに上の地球の写真は球体のように感じるけれど、次の写真(この写真は2018年1月22日に筆者が撮影したスーパームーン)では、縁もはっきりと見えて平べったい感じがしますね。

これは次のイラストのように考えると納得がいきます。

これらの二つの謎を解くカギは、月の表面を覆っているのが、大きさミクロンサイズの細かい砂粒である点にあります。月の表面というと、クレーターがあるのでゴツゴツした地形のように思ってしまいますが、実は月の表面は20~30m、海の部分で2~8mの厚さで細かい砂粒で覆われているのです。これは宇宙から高速で降り注いだ隕石が、大気がないので燃え尽きずに降り注いで砕け散り、溜まったものです(地球上では燃え尽きて流れ星になります)。高速で衝突して溶けて再び固まるので、ガラス質も含んでいます。1969年7月に、アポロ計画で月に降り立った宇宙飛行士の足跡を見ると、砂粒の様子がよく分かります。この砂粒が、光を全方向に反射するために、どこも一様に光って見えるのです。

足跡の拡大 Wikipediaレゴリスより

ちょっと脱線。上の足跡の写真ですが、宇宙飛行士と一緒に左下に移っている足跡はへこんで見えますが、下の拡大した写真は足跡が盛り上がっているように見えませんか?これは錯視の一種です。画面を180度回転させてみてください。パソコンだとできないかも、その場合は頭を180度回転させて画面を見てください。今度はへこんでいるように見えますよね。これは、光は上の方からくるという前提で脳が解釈しているためです。

月の表面には、大中小と大きさの異なる多数のクレーターがあります。これは38から46憶年前に起こった隕石の衝突で生まれたものです。地球上にも同じような隕石衝突跡があったのですが、空気や水があるために、その浸食作用で消失しました。残っているもので有名なものはアメリカのアリゾナにあります。月のクレーターは小型の望遠鏡で簡単にみることができます。後で観察できますからお楽しみに。

ところで月の表面を観察していると、いつも同じ面しか見えていないことに気が付きます。月は、その裏側を見せてくれないのです。これは月の自転周期(27.32日)が地球の周りをまわる公転周期と一致しているからです。最初にソ連、次にアメリカの探査機が月の裏側を撮影することに成功しました。アメリカの撮影した裏側の写真を、表側のものと比べてみましょう。

左上が表側、右上はアメリカ・クレメンタインが撮影した裏側
下の写真は高さを色で表示、緑色が0、黄色から赤になるほど高く、青が濃くなるほど低いことを示す。上はWikipedia、下は日本科学未来館

このように月の表面の高さは表と裏でだいぶ異なり、表側は高低差が少なく、裏側は高低差が大きいことが分かります。地殻の厚さに表側と裏側で差があるためだと考えられています。

イラストの中に書かれているように、表側の方が地殻が薄いために、隕石が衝突した後、マグマが下からあふれてクレーターを覆い隠して黒い部分、つまり海ができたと考えられています。どうして表と裏で厚さが異なるのか、月の誕生と関係しているようですが、よくわかっていないようです。

月はいつでも満月ではないですよね。下の図の左上の新月から満月へ、また新月へと光る部分の大きさを変えていきます。月齢と言います。

Wikipediaより

この月の満ち欠けは、月が地球の周りを周回しているため、光を照射する太陽と、光を受ける月と、観察する地球の間の相対的な位置関係が刻々と変わっていくためにために生じます。図示すれば次のようになります。外側に描かれた月は、地球からの見え方を示しています。


見え方の変化の詳しい説明はこのページにあります。

自作の模型を使って、月の満ち欠けの様子を実感してみましょう。下の写真が、講義で使った模型です。三体模型ではないので観察者が模型の周りを回ると、月の満ち欠けを再現することができます。写真に写っているように模型の手前から見ると下弦の月、模型の右側に回って見ると新月、向こう側からみると上弦の月、左側から見ると満月になります。実際には、月が地球の周りを回っているので、その様子を示した動画を載せておきます。

裏話を少し。この模型は、研究所に転がっていた廃材を使って組み立てたものですが、月が全体的に光る様子を再現するのに苦労しました。右は金属球を月に見立てたものですが、これだと、上の方で述べた地球と同じで、一点が光ってしまい盆のような月にはならないのです。一方、左の方は発泡スチロールの球を使いました。これだと、発泡スチロールの表面の細かい粗面が、細かい砂粒と同じように働いて、全体的に反射するという状況をよく再現して、盆のような月になります。

ここで少し脱線。満月は実は真ん丸ではない?!
実は、本当の満月を見ることはできないのです。その理由は次のイラストにあるように、月の公転周期面が地球の公転周期面とおよそ5度の角度で傾いているためです。

イラストにあるように、満月の時ほんのわずかですが地球から見て上にあるので、太陽からの光がずれるためです。本当に真ん丸に見えるのは、太陽・地球・月が一直線に並んだ皆既月食の時です。でもその時は月食ですから太陽の光は地球にさえぎられて光っていないはずですよね。でも実際は、日食の場合と違って、皆既月食の時の月は赤く見えるのです。

地球が太陽の光をさえぎってしまう皆既月食、でも赤く見える。その理由は、次のイラストにあるように、赤い波長の光は地球を回りこんで月を照らすからなのです。

月は大昔から知られていて、長年にいわたって調べつくされてきました。それでも、よく見たり考えたりすると、まだまだ不思議なことが見つかって、興味のつきない天体です。身近に観察できる月を眺めて、その美しさをめでるとともに、新しい発見を楽しんでください。

ちょうど話が終わったときに、雲が切れて月がきれいに見えると分かりました。みんな勇んで2台の天体望遠鏡が設置されている校庭に向かいました。

望遠鏡で眺めると、クレーターがはっきりと観察でき、みんな感激!聞いたばかりの話をかみしめながら、月を眺めていました。せっかくなので、月から望遠鏡をちょっとずらして土星も観察。土星の輪がはっきりと見えて、こちらも感激。実際に「見る」ことの大切さがよくわかりました。

最後に余計なことを。備品の天体望遠鏡は管理が悪いためか、事前にチェックした時は正常な動作をせず、ちょっと修理をしました。それでも当日、操作に苦労しました。理科教材のメインテナンスにかかる人員が十分ではなく、せっかくの備品が箪笥の肥やしになってしまっているのではと危惧します。

東京ガス四谷クラブでの活動

和田勝会員が、10月5日に東京ガス四谷クラブで「石川太郎先生に習ったことなどーその後の遺伝にまつわる話、遺伝子DNAへ」というタイトルで講演をしました。

以下は講演者のつぶやきです。

石川太郎先生というのは高校の時の生物の先生で、3年生の時に生物学を習いました。高校に入ったときは、中学校の時に古本屋で買って読んだ、ガモフ全集の中の「1,2,3、、、無限大」や「不思議の国のトムキンス」が面白かったので、物理学をやりたいと漠然と思っていました。でも、2年生の時の物理についていけず、3年生で習った生物の方を面白いと思いました。今でも黒板に先生が描いたパネットの方形を使って、メンデルの法則の説明を受けたのを覚えています。

というわけで、このことを枕に、高校のミニ同期会で、上のような講演をしました。理系の人ばかりではないので、なるべく難しくないようにと考えて、ヨーロッパのロイヤルファミリーの血友病からロシア革命のときに命を落としてロマノフ王朝最後のニコライ2世一家の話、そこから血友病の遺伝と、伴性遺伝、さらに第8因子のタンパク質の欠陥の話などをしました。ちょっと盛沢山にしすぎて、がん化の遺伝的背景や老化と遺伝子の関係にも触れました。

後で感想を聞くと、チンプンカンプンだったとか、難しかったという意見が多くてショックでした。 後でメールでもらった感想の中に、「タンパク質は身体を構成する重要な物質程度しか理解していなかったので、アミノ酸の並び方によって違っていることは初めて知りました。 」というのがありました。

そこで思い至りました。こちらは当然のこととして、タンパク質というのは集合名詞で、その中に多種多様な種類の個々のタンパク質があり、それぞれはアミノ酸の配列が違い、それぞれに名前のついている、というように考えているけれど、すべての人が必ずしもそうではないのだということです。

それで思い出したことは、昔、大学1、2年生に生物学の講義をしていた時に、ステロイドホルモンとテストステロンを同列に考えて混乱したという感想を聞いたことでした。集合名詞と個々のものに名付けられた名詞という階層構造がぴんと来なかったようです。

これって、野菜という名詞とキャベツやキュウリという名詞の違いを分かっていれば、当然のことのように思えるけれど、必ずしもそのように普遍化できないようです。

これからは、上記のことを踏まえて、より分かりやすく科学知識、リテラシーの普及に努めなけらばと反省したのでした。

東京雑学大学での活動

大井みさほ会員が、10月3日の午後に、東京雑学大学で「 生活と物理・新しい単位の定義 」というタイトルで、身の回りには物理に関係するものがいろいろとあることを、小中学生の自由研究のテーマを例として示しながら、お話しました。

特に人体にかかわりのある物理として、ヒトの姿勢、体重、重心、運動量などを考えるには、力学が大切なことをお話しました。

また新しい単位の定義として、本年5月からプランク定数の数値が不変のものとされ、キログラムはキログラム原器による定義から、プランク定数を使った定義に変ったことを紹介しました。

今回の内容は、2019年11月18日に小金井雑学大学で行ったものとほぼ同じなので、内容紹介は省略します。 そちらを参照してください。

江戸川区子ども未来館での活動(2)

和田勝会員が、8月17日の午後に、江戸川子ども未来館の夏休み応援プロジェクトの一つとして「生き物は細胞でできている」というテーマで、小学校児童11名に実験授業を行いました。15名の応募があったということでしたが、欠席が予想よりも多かったようです。 例年時間が足りずにあわただしいので、今年は午後1時から4時まで、3時間の枠を取ってもらいました。途中で休みを入れるつもりです。

始まる前の静かな実験室。写っているのはボランティアで補助をしていただいた高校生Mさん。

事前に11ページほどの 資料を送付してコピーをお願いしておきました。少し早めに子ども未来館2階の会場に到着すると、子ども未来館の前川さんが顕微鏡などを並べ、準備をしておいてくれていました。コピーされていた資料を机の上に置き、小さなシャーレに持参したゾウリムシを入れて配布し、底に敷く黒い紙も用意してもらいました。そのほかの準備を、ボランティアの方も交えて整えて、あとは1時の開始を待つばかりになりました。

基本的な内容は昨年のものと変わらないので、詳しいことは省略しますが、今回は、20倍の実体顕微鏡がテーブルにあったので、広告チラシを裁断して各自に配布しておききました。受講者の児童が入ってきました。気を引き締めて開始です。今回、いつもと違たのは大きなビデオカメラを持った人がいたことです。J:COM江戸川の方で、夕方の地域限定のニュースのために、取材に来てくださったそうです。撮影してもいいかを、口頭でみんなに確認して許可を受けました。

自己紹介の後、今日のテーマである「生き物は細胞からできている」の趣旨について説明しました。5年生の時に、メダカの発生やヒトの胎児のお母さんのおなかの中での成長について学習しますが、体が大きくなるということはどういうことか、細胞という単位の数が増えていくのだということを強調しました。

ところが細胞は普段の生活の中では目に見えないために、その存在に気が付きません。それで拡大する装置が必要だということを説明し、テーブルの上にある実体顕微鏡で広告のチラシの色のついた写真を眺めてもらいました。広告の魚や果物の写真は、小さな色の点で印刷されていることが分かります。色(色材)の三原色はCYMKがあることをちらっと説明しましたが、あまり興味はないようでした。確かに、細胞とは関係ありませんものね。で、その実体顕微鏡を使ってシャーレに入れたゾウリムシを観察してもらいました。小さな白いものが、ざわざわと泳ぎ回っています。さあ、このあたりから本題に移ります。光学顕微鏡を使ってゾウリムシの観察です。

顕微鏡は学校でもう使ったことがあるというので、操作法についてあまり詳しくは説明しませんでした。あとのほうで、対物レンズを下げすぎてスライドグラスを割ってしまうという事態が何件か生じたので、やはりちゃんと説明するべきでした。ともあれ、動き回るゾウリムシを観察することができました。

この後は、タマネギの鱗茎葉表皮細胞、ミニトマト果皮の表皮細胞、自分の頬の上皮細胞を観察してもらいました。タマネギとトマトの細胞の形や細胞の周りの部分(細胞壁ですが、最初はあえて名前を言わずに)の厚みの違いは?、植物細胞と頬の上皮細胞の違いは?、など自分で考えるように促しました。

細胞の数が増えることによって、体が大きくなっていくのだということを実感してもらうために、ウニの発生の動画を見てもらいました。そのあとで、ネギの根端分裂組織を観察して、分裂像を探してもらいました。

分裂像は、見つけられた児童も見つけられなかった児童もいましたが、細胞の中には一つだけ核があって、その中には染色体があって、そこに遺伝子が乗っているんだよ、ずっと後で習うことだけどね、という話で終わらせました。長丁場で聞いているほうは、ちょっと疲れたかもしれません。先生も疲れました。あ、そうそう、休み時間はちゃんと取りました。その間に、J:COMのカメラマンの方はインタビューをしていました。

次の動画が、8月19日午後5時からJ:COM江戸川のニュースで流れたものです。とてもよく編集されていて、ナレーションもよく、実際以上に児童たちはよい体験をしたと受け取ってもらえるかもしれません(ちょっと謙遜)。

受講した児童からのアンケート結果は以下のようなものでした(回答数11)。

わかった度 Good 5、 Fair 5、 Poor 1
わくわく度 Good 4、 Fair 6、 Poor 0

感じたことやわかったことをかく欄には、次のような記述がありました(抜粋、原文ママ)。
「説明がとても聞きとりやすかった。このじゅ業を受けてよりさいぼうのことを知りたくなった。もっといろいろなさいぼうを観察したい」「きそく正しくびっしりとつまっている」「赤いえきをたらしたら、とても見やすくなって、びっくりした」「今日の講座では、細胞についてわかりました。自分のほほの中からトマトまで、いろんな細胞まで見れました。自分のほほの中の細胞があることにびっくりしました。<-細胞という言葉をしらなかった」「食べ物にも細胞があり、分裂もすることがわかった」「野菜(トマト)は、色素が赤いから、トマトの実は赤くなる。単細胞生物と多細胞生物がある事を知りました」

江戸川区子ども未来館での活動(1)

大井みさほ会員が、8月12日の午後に、江戸川区子ども未来館の夏休み応援プロジェクトの一つとして、「光の進み方を調べてみよう」というテーマで、小学校児童10名に実験授業を行いました。

児童らの各テーブルに水槽を置き、水槽には水と少量のカルピスを入れて光の軌跡が見えるようにします。 緑と赤のレーザーポインターを配って、水槽の横からレーザーポインターで光を当ててもらい、光の反射と屈折を観察してもらいました。

次に、2人一組になって、光ファイバーを使ってレーザー光が光ファイバー内を全反射しながら進んで反対側に到達することを確認し、信号を送ることができることを実感してもらいました。

その後、キャラメルの空き箱を使って片方の面にスリットをあけ、その反対側に四角の孔をあけてもらいまし回折格子片を張り付け、簡易分光器を製作してもらいました。蛍光灯の光を観察し、赤や緑などのスペクトルの色が見えることを確認してもらいました。

最後に児童らにはプリントを配り、白板に説明図を描きながら、光の屈折についての説明や光の波としての性質の説明を行ないました。

八王子市立中学校PTAとの打ち合わせ

有山正孝、大井みさほの各会員が、7月21日の夕方、八王子京王プラザホテルで、八王子市立PTA連合の役員の方々と、今年度の八王子市立中学校科学コンクールへの協力について打ち合わせを行いました。

この活動はここ何年か 続いている活動で、今年は第11回になります。SSISSは昨年と同様、このコンクールに協賛することになりました。

12月7日(土)に開催される、優秀作品の発表会とポスター展示に参加して、ポスター発表の中からSSISS賞を2点、選出する作業を行うこと、表彰式で表彰状と副賞を理事長が選出された生徒にに授与する、ということが決まりました。

立教池袋中学校・高等学校での活動

大井みさほ、小林憲正、和田勝の各会員が、7月20日に立教池袋中学校・高等学校で開催された2019年度立教池袋中学校・高等学校の科学部と生物部合同研究発表会に、急なことだったのですが招かれたので助言できるかもしれないと思って参加しました。昨年と異なり、今年は池袋だけの中学校・高等学校の生徒の発表会でした。

発表は生徒2名の司会により進められ、午前中に休憩を挟んで5題ずつ計10題、午後からも同様に10題の演題があり、中学生によるものが14、高校生は6題でした。科学部と生物部が半々でしたが、科学部の演題は物理が少なく、ほとんどが化学を題材としたものでした。

生物分野の題材に関して言えば、「クローバーの研究」「ヤドカリの研究」「ゴンズイの研究」という大きなタイトルのものが多く、内容はまだ計画段階のものや、焦点が明確でないものが散見されました。中1から高3へとだんだんと切り口や方法などが洗練することが認められましたが、科学的な研究の基本である、「現象を観察し、なぜそのようになるか仮説を立て、実験を行い検証する」という手順を踏んだものが少ないことが気になりました。

研究計画を立てるとき、あるいは少し経って研究が始まったときに、上で述べた科学の手順を踏むためには、どのような実験を行えばよいか、どのように結果を考えて次のステップに行くのがよいかを、SSISSとして相談を受けたり助言するのが有益ではないかと思いました。


市川学園市川高等学校での活動

廣田穣、細谷治夫、町田武生の各会員が、2019年7月6日に市川学園市川高等学校で行われたSSH生徒課題研究の今年度の中間発表会に参加し、指導助言を行いました。

例年と同じように、今年度に新しく始まった課題研究の中間発表を生徒がポスター形式で発表するものです。詳しい情報がないので、この件については、これまでとします。

日本理科教育振興協会総会に出席

和田勝会員が、2019年5月28日に東京ガーデンパレスで開催された公益社団法人日本理科教育振興協会の第48回定期総会に出席しました。活動報告にはちょっとそぐわない気がしますが、いちおうSSISSはこの協会の会員なので、書いておきます。

副会長の開会宣言の後、会長の挨拶があり、理科教育の重要性について述べられました。来年度から学習指導要領が変わるので、この一年が重要だと強調、実験、問題発見、考えて解決のサイクルを実験室で行うためには、理科教育の責任は大きいと述べていました。続いて来賓の文部科学大臣(大臣官房審議官が代読)の祝辞がありました。この協会は、会員数は1110社あるそうです。

会長から スライドを使って 平成30年度の活動報告がていねいに行われました。続いて今年度の事業計画と事業予算が説明されました。 議事として第一号議案平成30年度収支決算の説明があり、監査報告を経て承認され、第二号議案として役員改選が諮られ、提案通り承認されました。 そのあと、何人かの政治家の方々からの祝辞がありました。

総会後終了後に、環境・防災研究所所長で東大名誉教授の藤井敏嗣氏の「火山噴火のメカニズムと日本の火山活動」といタイトルの講演がありました。

総会後の講演会

5月18日の総会終了後、午後3時から午後4時まで、大井みさほ会員よる「光の進み方を調べてみよう」というタイトルの講演会が行われました。講演会というよりは、大井会員がふだんSSISSの活動で行っている実験授業の内容を紹介して、光の性質について参加者に考えてもらおうというのが、近いかもしれません。

総会後に講演会を行うのは今回が4回目で、去年と同じようにA4色刷りのチラシを外注で作成し、総会の案内に同封して会員に送付するとともに、いくつかの場所に配布しました。

レーザーポインターを使い、水槽に水を入れて、参加者に光の進み方を確かめてもらったり、光ファイバーの中をレーザー光が外に漏れることなく全反射で伝わっていく様子などを確かめてもらいました。

水槽に水を入れ、少量の牛乳を入れて レーザーポインターのビームを見やすくします。水槽の横からビームを照射し、水中をビームが直進することを確かめます。次にビームを空気中から水中に向けて照射すると、ビームは水面で屈折して水中に向かいます。このとき、入射角より屈折角の方が小さくなります。入射角を変えていくと屈折角も変わりますが、両者の正弦の値の比は一定で、空気の絶対屈折率(1.00)と水の絶対屈折率(1.33)(分母は水)になります。

今度は逆に、屈折率の大きな水から空気中に向かってビームを照射します。真上に向けた場合(これは水槽ではできませんが)はそのまま突き抜けます。90度から角度を小さくしていくと、 一部は屈折して空気中に出ていき 一部は反射します。角度を小さくしていくと、あるところで屈折角が90度になり空気中に出て行かなくなります。このときの角度を臨海角と言い、水と空気の場合は48.6度です。これは次の式を使って求められます。

  sin(入射角)/sin(屈折角)=空気の絶対屈折率/水の絶対屈折率

屈折角は90度なのでこの項は1となり、空気の絶対屈折率は1なので、結局、sin(入射角)=1/1.33となり、この値は0.750で、角度は上の値(48.6度)になります。つまりおよそ50度よりも小さくすると、光はすべて水面で全反射することになります。(次の図は「わかりやすい高校物理の部屋」の全反射の項からお借りしています。)

上の式から、分子に比べて分母の屈折率が大きいほど全反射の臨界角が小さくなることが分かります。光ファイバーは、屈折率の大きなガラスなどを中心(コア)に使い、外周部(クラッド)に屈折率の小さな素材を使っているので、光は中心部を全反射しながら進んでいくことができるのです。電磁波の影響を受けないので、光ファイバーは今や、デジタル通信などに欠かせない素材となっていますね。